オープンウェーブ
オープンウェーブ（Openwave）は、かつてLibris、Unwired Planet、phone.comという社名で知られた、アメリカの知的財産権所有企業です。1990年代中頃のモバイルインターネット黎明期において、パイオニアとしての役割を果たしました。特に2000年代初頭のWAP1.0時代には、WAPプロキシサーバーとWAPブラウザーで圧倒的なトップシェアを誇っていました。
しかし、2005年以降、ネットワークの高速化、端末の処理能力向上、ディスプレイの大画面化、そしてコンテンツ記述のインターネット標準化が進むにつれて、同社の強みであった携帯電話に特化した技術は、次第にインターネット標準技術に取って代わられるようになりました。この変化により、オープンウェーブの業績は下降線をたどり、事業の切り売りを余儀なくされ、現在は知的財産権の管理・活用に重点を置く企業へと転換しています。
1998年、オープンウェーブは実質的に世界初となるモバイルインターネット用マークアップ言語HDMLを策定しました。同社はHDMLをW3Cに提案しましたが、W3Cはこれを採択しませんでした。しかし、HDMLはWAP Forumが定めたWMLの基礎となり、WAP1.0時代のモバイルインターネットを支える重要な要素となりました。
WAP1.0時代においては、マークアップ言語はHDMLかWML、トランスポートレイヤーは携帯電話専用のWSP/WTPが主流でした。特にHDMLやWML1.0では、端末の処理能力の低さやネットワークの低速さを補うために、レンダリングの一部やプロトコル変換にWAPプロキシサーバーが重要な役割を果たしていました。このため、WAPサービスにおけるWAPプロキシサーバーの重要性は非常に高く、北米では多くの主要事業者がphone.comのWAPプロキシサーバーを採用しました。同社のWAPプロキシサーバーは事実上のリファレンス・マシンとしての地位を確立し、サーバーでの優位なシェアは、クライアントであるWAPブラウザー市場にも影響を与え、自社開発のUP.Browserが一時はデファクトスタンダードとなりました。
日本でも、第2世代携帯電話の時代に、IDOやDDIセルラーグループ（現在のau）がWAPを採用する際に、phone.comのWAPプロキシサーバーとUP.Browserを採用しました。
しかし、携帯電話ネットワークの高速化、端末の処理能力向上、ディスプレイの大画面化が進むにつれて、携帯電話ネットワークのみで使われるマークアップ言語やプロトコルは批判に晒されるようになりました。例えば、HDMLやWMLはコンテンツ記述に専用のオーサリングツールが必要であり、一般的なHTMLブラウザーで確認することができないという問題がありました。また、高速化されたネットワークにおいても、インターネット側のTCP/IPと携帯電話ネットワーク側のWSP/WTPとのプロトコル変換が、性能向上の足かせになっているという指摘もありました。
このような状況から、WAP2.0では、WMLやWSP/WTPも仕様の一部として残されたものの、よりインターネットと親和性の高いXHTML/MPがマークアップ言語として、TCP/IPがトランスポートレイヤーとして採用されました。結果として、コンテンツプロバイダーはWMLを、携帯電話事業者はWTP/WSPをそれぞれ捨て、XHTML/MPとTCP/IPに移行しました。これにより、オープンウェーブのWAPプロキシサーバーにおける強みは失われることになりました。
2008年以降、iPhoneやAndroidなどのスマートフォンが登場し、フィーチャーフォンの市場が縮小したことも、フィーチャーフォン向けクライアントソフトウェアの販売を主な事業としていたオープンウェーブにとっては大きな打撃となりました。スマートフォンでは、ソフトウェアプラットフォームの提供元がブラウザーやMMSクライアントを実装するようになったため、オープンウェーブ製品の利用機会はほとんどなくなりました。
2008年には、モバイルクライアントソフトウェア事業をPurple Labs（現在のMyriad）に売却しています。
かつて、オープンウェーブは以下の製品を開発・提供していました。
Openwave Adaptive Messaging
Openwave Messaging Anti-Abuse
Openwave Download Manager
Openwave Mobile Edge
Openwave MVNO
Openwave Multimedia Messaging Service Center (MMSC)
Openwave Voice Mail
Openwave Email Mx
Openwave PhoneSuite
Openwave Mobile Access Gateway
Openwave Contextual Merchandising
Openwave Push Proxy Gateway
かつては主力製品であったOpenwave Mobile Browser（旧名:UP.Browser）やOpenwave Mobile Messaging clientは、Purple Labsに売却されています。
1996年: Libris社として創業
1998年: Unwired Planetに社名変更
1999年: Belfast社を買収し、phone.comに社名変更
2001年: software.comと合併し、Openwave Systemsに社名変更
* 2008年: モバイルソフトウェア事業をPurple Labs（現:Myriad）に売却
オープンウェーブは、モバイルインターネットの黎明期を支えた企業として、その歴史に名を刻んでいます。
しかし、2005年以降、ネットワークの高速化、端末の処理能力向上、ディスプレイの大画面化、そしてコンテンツ記述のインターネット標準化が進むにつれて、同社の強みであった携帯電話に特化した技術は、次第にインターネット標準技術に取って代わられるようになりました。この変化により、オープンウェーブの業績は下降線をたどり、事業の切り売りを余儀なくされ、現在は知的財産権の管理・活用に重点を置く企業へと転換しています。
モバイルインターネット黎明期の立役者
1998年、オープンウェーブは実質的に世界初となるモバイルインターネット用マークアップ言語HDMLを策定しました。同社はHDMLをW3Cに提案しましたが、W3Cはこれを採択しませんでした。しかし、HDMLはWAP Forumが定めたWMLの基礎となり、WAP1.0時代のモバイルインターネットを支える重要な要素となりました。
WAP1.0時代においては、マークアップ言語はHDMLかWML、トランスポートレイヤーは携帯電話専用のWSP/WTPが主流でした。特にHDMLやWML1.0では、端末の処理能力の低さやネットワークの低速さを補うために、レンダリングの一部やプロトコル変換にWAPプロキシサーバーが重要な役割を果たしていました。このため、WAPサービスにおけるWAPプロキシサーバーの重要性は非常に高く、北米では多くの主要事業者がphone.comのWAPプロキシサーバーを採用しました。同社のWAPプロキシサーバーは事実上のリファレンス・マシンとしての地位を確立し、サーバーでの優位なシェアは、クライアントであるWAPブラウザー市場にも影響を与え、自社開発のUP.Browserが一時はデファクトスタンダードとなりました。
日本でも、第2世代携帯電話の時代に、IDOやDDIセルラーグループ（現在のau）がWAPを採用する際に、phone.comのWAPプロキシサーバーとUP.Browserを採用しました。
技術革新と事業転換
しかし、携帯電話ネットワークの高速化、端末の処理能力向上、ディスプレイの大画面化が進むにつれて、携帯電話ネットワークのみで使われるマークアップ言語やプロトコルは批判に晒されるようになりました。例えば、HDMLやWMLはコンテンツ記述に専用のオーサリングツールが必要であり、一般的なHTMLブラウザーで確認することができないという問題がありました。また、高速化されたネットワークにおいても、インターネット側のTCP/IPと携帯電話ネットワーク側のWSP/WTPとのプロトコル変換が、性能向上の足かせになっているという指摘もありました。
このような状況から、WAP2.0では、WMLやWSP/WTPも仕様の一部として残されたものの、よりインターネットと親和性の高いXHTML/MPがマークアップ言語として、TCP/IPがトランスポートレイヤーとして採用されました。結果として、コンテンツプロバイダーはWMLを、携帯電話事業者はWTP/WSPをそれぞれ捨て、XHTML/MPとTCP/IPに移行しました。これにより、オープンウェーブのWAPプロキシサーバーにおける強みは失われることになりました。
2008年以降、iPhoneやAndroidなどのスマートフォンが登場し、フィーチャーフォンの市場が縮小したことも、フィーチャーフォン向けクライアントソフトウェアの販売を主な事業としていたオープンウェーブにとっては大きな打撃となりました。スマートフォンでは、ソフトウェアプラットフォームの提供元がブラウザーやMMSクライアントを実装するようになったため、オープンウェーブ製品の利用機会はほとんどなくなりました。
2008年には、モバイルクライアントソフトウェア事業をPurple Labs（現在のMyriad）に売却しています。
オープンウェーブの製品群
かつて、オープンウェーブは以下の製品を開発・提供していました。
Openwave Adaptive Messaging
Openwave Messaging Anti-Abuse
Openwave Download Manager
Openwave Mobile Edge
Openwave MVNO
Openwave Multimedia Messaging Service Center (MMSC)
Openwave Voice Mail
Openwave Email Mx
Openwave PhoneSuite
Openwave Mobile Access Gateway
Openwave Contextual Merchandising
Openwave Push Proxy Gateway
かつては主力製品であったOpenwave Mobile Browser（旧名:UP.Browser）やOpenwave Mobile Messaging clientは、Purple Labsに売却されています。
年表
1996年: Libris社として創業
1998年: Unwired Planetに社名変更
1999年: Belfast社を買収し、phone.comに社名変更
2001年: software.comと合併し、Openwave Systemsに社名変更
* 2008年: モバイルソフトウェア事業をPurple Labs（現:Myriad）に売却
オープンウェーブは、モバイルインターネットの黎明期を支えた企業として、その歴史に名を刻んでいます。
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