オーラバトラー戦記

『オーラバトラー戦記』は、1986年から1992年にかけて雑誌『野性時代』で連載された、富野由悠季による長編ファンタジー小説です。全11巻が単行本として刊行され、TVアニメ『聖戦士ダンバイン』をベースにしながらも、独自のストーリーと世界観を展開しています。

本作は大きく分けて三つのパートで構成されています。最初の数巻は物語の前史にあたる部分で、『ダンバイン』とは異なる独自の展開を見せています。中盤は地上編として、主人公たちが地上世界とバイストン・ウェルの間を往来する様子が描かれます。そして最終章では、再びバイストン・ウェルを舞台に物語が展開し、壮大なフィナーレを迎えます。

初期の巻では、前作『リーンの翼』を彷彿とさせる、ハードな描写が見られます。しかし、物語が進むにつれて、こうした描写は次第に薄れていきます。長編であるため、時間経過の設定に若干の差異が見られる箇所もありますが、全体を通して一貫した世界観が維持されています。また、単行本の版によって加筆修正されており、特に地上編では、時代を反映したアイテムが登場するなど、版による違いも楽しめます。

『ダンバイン』でおなじみのキャラクターたちが多数登場しますが、設定は細部で異なっています。ショウ・ザマに相当する主人公は、城毅（ジョク）という大学生です。ジョクは、アメリカへの留学中に事故に巻き込まれ、恋人である田村美井奈（ミイナ）と共にバイストン・ウェルへ召喚されます。

物語は、ジョクがドレイク・ルフト率いるアの国軍に加わり、ガロウ・ランとの戦いに身を投じることから始まります。仲間であるバーン・バニングスやガラリア・ニャムヒーと共に、幾多の戦いを潜り抜けていきます。しかし、ドレイクの行動に疑問を抱き始め、やがて反旗を翻すことになります。

地上編では、バイストン・ウェルと地上界の時間軸のずれが重要な要素となります。物語の序盤では、バイストン・ウェルで3年が経過した間に、地上では10年が経過したと描写されますが、物語の中盤では、逆の現象も描写されています。この時間軸のずれが、物語に独特の緊張感と謎めいた雰囲気をもたらしています。

地上編を経て、再びバイストン・ウェルへ戻るジョク。物語の終盤は、『ダンバイン』とは異なる展開を見せます。多くの登場人物たちが、それぞれの思惑と葛藤を抱えながら、運命の戦いに挑んでいきます。ジョクとミイナの恋物語、ドレイクとルーザの政略結婚、そして、ガロウ・ランとの抗争など、様々な人間模様が複雑に絡み合い、物語に深みを与えています。

登場人物は『ダンバイン』と共通する名前を持つ者も多いですが、性格や役割は大きく異なっています。例えば、ショット・ウェポンはアニメ版とは異なり、老人として描かれています。また、バーン・バニングスはアニメ版よりも思慮深く賢明な性格で描かれています。

ミイナは、ジョクと共にバイストン・ウェルに召喚されますが、記憶を失ってしまいます。その後、ガロウ・ランに捕らわれ、過酷な運命を辿ります。物語終盤では、記憶を取り戻し、ジョクを救うために命を落とします。

オーラバトラーやオーラマシンなども登場しますが、アニメ版とは異なるデザインや性能を持つものも登場します。物語が進むにつれて、新たなオーラマシンが開発され、戦いの様相は刻々と変化していきます。

『オーラバトラー戦記』は、『ダンバイン』を踏まえつつも、独自の世界観とストーリーで読者を魅了する、壮大なスペースオペラです。複雑な人間関係、奥深い設定、そして、予測不能な展開の数々が、読者に忘れられない読書体験を与えてくれるでしょう。

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