カインド・ハート

映画『カインド・ハート（Kind Hearts and Coronets）』の概要

1949年に公開されたイギリス映画『カインド・ハート』は、ロバート・ハーメルの巧みな監督のもと、デニス・プライスとアレック・ギネスが主演を務める作品です。オリジナルのタイトルは「優しい心と冠」で、詩人アルフレッド・テニソンの詩に由来しています。日本では未公開ながら、2008年にDVD化されました。本作は、スティーヴン・シュナイダーの著書『死ぬまでに観たい映画1001本』にも収められており、多くの映画ファンにとって必見の作品とされています。

あらすじ

物語は、ルイ・マッツィーニが主人公です。ルイの母はチャルフォント公爵家の出身でしたが、貧しい音楽家と恋に落ち、駆け落ちした結果、公爵家から追放されてしまいます。その母が死去した際、彼女は公爵家の墓には葬られませんでした。この経験がルイの心に復讐心を芽生えさせることになります。

ルイは母の名誉を取り戻し、さらに女系での相続を狙って、邪魔になるバスコイン家の人々を次々と排除していく計画を立てます。実際に彼は、アレック・ギネスが一人で演じる八人のキャラクターを次々に暗殺していく姿が、物語の大きな見どころとなっています。その巧みなキャラクター演技に観客は引き込まれ、予想外の展開に驚かされます。

全ての障害を排除したルイは、公爵の地位を手に入れることができますが、物語は復讐劇からさらに複雑な人間関係へと展開します。ルイはライオネルという人物の妻、シビラと関係を持ちつつも、最終的にはイディスとの結婚を選択します。運命の皮肉によって、ライオネルとの争いが生じ、最終的にはライオネルが自ら命を絶つという悲劇的な結末に至ります。

さらに、シビラがライオネルの自殺を巡る遺書が存在しないと告げたことから、ルイに不幸が訪れます。彼は殺人罪で絞首刑にされる運命を辿ります。字幕では母が「公爵夫人」と誤って表記されるなど、細部にも映画ならではの興味深い点があります。

スタッフとキャスト

本作の脚本はロバート・ハーメルとジョン・ダイトンが手掛けています。デニス・プライスは主人公ルイの役を演じ、アレック・ギネスは多くの役柄を一人で担うという斬新なスタイルで観客を魅了します。

特に、アレック・ギネスの演技は多様性に富んでおり、公爵、提督、将軍など、バスコイン家の人々を見事に演じ分けます。また、ヴァレリー・ホブソンがイディス役、ジョーン・グリーンウッドがシビラ役を演じるなど、魅力あふれるキャストが集結しました。

まとめ

『カインド・ハート』はただの復讐劇にとどまらず、複雑な人間関係や運命の皮肉を描いた深い作品です。その独特なストーリー展開と演技力は観る者を引き込み、映画としての完成度を高めています。ロバート・ハーメル監督のセンスが光る本作は、映画史に名を刻む一作と言えるでしょう。

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