カウパーの小聖母

カウパーの小聖母

『カウパーの小聖母』（伊: Piccola Madonna Cowper, 英: Small Cowper Madonna）は、ルネサンスの巨匠ラファエロ・サンツィオによって1505年頃に制作された作品です。この油彩画は、イタリアの風景の中に描かれた聖母マリアと幼児キリストを特徴としています。現在、この作品はワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーに所蔵されています。

作品の特徴

絵画の中心には、鮮やかな赤いドレスをまとった聖母マリアが座っており、その美しい金髪と色白の肌が印象的です。聖母は木製のベンチに座り、彼女の太腿には暗い色の衣類が広がり、優雅に右手を置いています。彼女の頭部には半透明のヴェールがかかっており、金色の光輪が聖母と幼児を囲んでいます。

聖母は片腕で背中に回し、もう一方の腕で幼児キリストを抱きかかえています。幼児は恥ずかしそうに振り向いて微笑んでおり、その表情はこの作品の愛らしさを引き立てています。背景には、明るい日中の風景が広がり、二人の人物が池のほとりを歩く様子が見えます。遠景には、カトリックの教会と思われる大きな建物があります。このchurchは、襟ドームや他の宗教的な構造要素を持ち、作品全体に神聖で優雅な雰囲気を加えています。

ただし、この絵画の制作背景の詳細はわかっていません。聖母子の姿は結婚祝いとして私的に発注されたものである可能性があるほか、ウルビーノ公爵が埋葬されたサン・ベルナルディーノ教会が右側に描かれているため、礼拝のために家族によって依頼されたものとさえ考えられています。さらに、ウルビーノはラファエロの故郷でもあるため、彼が育った場所に関連する思い出を表現していると解釈されることもあります。

来歴と保存

この作品について最初に記録したのはジョルジョ・ヴァザーリで、彼はラファエロがウルビーノ公爵のために描いた聖母のひとつであると伝えています。1780年頃、この絵画はフィレンツェの第3代クーパー伯爵ジョージ・クレイヴァーリング＝クーパーによって購入され、彼はグランドツアーで訪れたイタリアでの美術コレクションを形成しました。その後、1913年には初代デュヴィーン男爵ジョゼフ・デュヴィーンに売却され、1914年にはフィラデルフィアの富豪ピーター・アレル・ブラウン・ワイドナーに116,500ポンド（565,000ドル）で購入され、その息子が1942年にナショナル・ギャラリーに寄贈しました。

1983年には絵画が修復され、黒ずんだニスや過去の修復跡が取り除かれました。この過程で、人物の背後に石の壁が描かれていたことが判明しました。

関連作品

『カウパーの小聖母』には、同じくラファエロの未完成バージョンである『ペルッツィの聖母』もあります。この作品は同様の構図を持ち、同一のカルトンを基にしていると考えられています。2018年には、ニューヨークのクリスティーズで「ラファエロまたはその同僚による作品」として売却されました。

展覧会

2015年にはナショナル・ギャラリーが『カウパーの小聖母』をマサチューセッツ州のウースター美術館に貸し出しました。同展にはウースター美術館の常設コレクションにある『ノースブルックの聖母』も展示され、画家の特定が試みられました。これらの展示は、ラファエロの影響や当時の美術の背景についての理解を深める機会となりました。

このように、『カウパーの小聖母』はラファエロの豊かな才能とルネサンス期の芸術の美しさを感じることができる重要な作品です。

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