カガネル

カガネル：カタルーニャ地方のユニークなクリスマス人形

スペイン・カタルーニャ地方のクリスマスには、ユニークな伝統人形「カガネル(Caganer)」が飾られます。日本語では「排便人形」や「糞ひり男」などと呼ばれ、その名前から想像される通り、しゃがみこんで排便をする姿が特徴です。一見すると奇妙なこの人形は、実は豊穣、希望、そして新年への繁栄を祈る象徴として、カタルーニャの人々の間で大切に受け継がれてきた伝統文化なのです。

カガネルの特徴

カガネルは、伝統的なバラティーナという帽子をかぶった男性人形です。ズボンを下ろして尻を出しており、股の間からは渦巻いた大便が表現されています。多くのカガネルは無表情ですが、目を丸くしたり、瞑想しているような穏やかな表情のものもあります。素材や大きさも様々で、1メートル近い紙製の人形から小さな陶器製の人形まで存在します。

なぜこのような人形が生まれたのかは諸説ありますが、イエス誕生の喜びを便意で表現している、あるいは翌年も豊作で食物に恵まれることを願う象徴など、様々な解釈がされています。

カガネルの歴史と文化

カタルーニャ地方では、クリスマスにイエス・キリストの降誕シーンを再現した立体模型「パセブラ」を飾る習慣があります。聖母マリアや聖ヨセフ、東方の三博士などの他に、このパセブラの中にひっそりとカガネルが置かれます。

カガネルの歴史は古く、中世の絵画には描かれていませんが、16世紀に制作されたカガネルの彫像が現存しています。18世紀から続くこの風習では、自宅に隠されたカガネルを探し当てることが、クリスマスの楽しみの一つとなっています。

伝統的には土で作られていましたが、現代ではプラスチック製のものも多くなっています。近年ではカガネルコレクターも存在し、1989年にはフィゲラス博物館で約500体のカガネルが展示されたこともありました。

現代のカガネル：多様なモチーフ

伝統的なカガネルはカタルーニャ地方の民族衣装を着た農民の姿をしていますが、現代ではサッカー選手、ミュージシャン、アニメキャラクター、さらにはイギリス王室関係者など、様々な著名人の排便姿を模したカガネルが登場しています。

これらはクリスマスシーズンになると、しばしば各国メディアで取り上げられ、世界中の人々を驚かせ、楽しませています。過去には、日本人サッカー選手の中村俊輔をモチーフにしたカガネルも登場し話題となりました。

カガネルを取り巻くカタルーニャの文化

カタルーニャ地方には、カガネル以外にも排便に関連したユニークな文化がいくつか存在します。

カガ・ティオー(Caga Tió)

クリスマスシーズンには、「カガ・ティオー(Caga Tió)」と呼ばれる丸太の人形も登場します。子供たちは「糞しろ、丸太！」と歌いながら棒で叩くと、丸太の下に隠されたお菓子やプレゼントが出てきます。これもまた、豊作や恵みを願う風習とされています。

カカ・イ・カルボー(Caga Tió)

1月6日の公現祭では、良い子にはお菓子が、悪い子には「カカ・イ・カルボー（糞と石炭）」が与えられるという風習があります。近年は石炭は省略されることが多いですが、「糞」に見立てた何かが与えられるという風習は残っています。

芸術作品における排便モチーフ

ジョアン・ミロやサルバドール・ダリといったカタルーニャ出身の著名な画家たちも、作品の中に排便を想起させるモチーフを用いています。ミロの『農場、ムンロッチ』やダリの『陰惨な遊戯』などは、その例として挙げられます。

河川名

中世のバルセロナには、「マルダンサ川(Merdança, 糞の流れ)」や「カガリェル川(Cagallel, 糞の運搬者)」といった、排便に関連した名前の川があったと言われています。

まとめ

カガネルは、一見すると奇妙な人形ですが、豊穣や繁栄を願うカタルーニャの人々の深い信仰と文化が凝縮された、ユニークで魅力的な伝統です。その歴史や背景を知れば知るほど、その奥深さに触れることができるでしょう。クリスマスシーズンのカタルーニャを訪れる機会があれば、ぜひカガネルを探してみてはいかがでしょうか。

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