カクレガニ科

カクレガニ科

概要

カクレガニ科（学名：Pinnotheridae）は、十脚目短尾下目に属するカニの一群です。この科に属するカニは、一般的に体が比較的小型で、他のカニに比べて甲羅が柔らかいという特徴を持っています。その名前が示す通り、多くが単独で自由生活を送るのではなく、他の動物の体内に「隠れて」生息する独特な生態を持っています。

生態と共生

カクレガニ科のカニは、特定の宿主動物と密接な共生関係を築いて生活しています。最もよく知られているのは、軟体動物である二枚貝類の体内、特に外套腔（がいとうこう）と呼ばれる空間に潜り込んで暮らす生態です。しかし、宿主は二枚貝に限らず、大型の巻貝類であるソデボラ類やアワビ類のような腹足類の体内にも見られることがあります。このような共生関係は、多くの場合「片利共生」とされています。これは、カクレガニが宿主の体内で安全な隠れ場所を得たり、宿主が濾し取る餌の一部などを利用したりして利益を得る一方で、宿主はカニの存在によって特に大きな利益も不利益も被らない関係を指します。

また、カクレガニ科の中にはさらに特異な共生関係を持つ種も存在します。例えば、Tunicotheres属の一部のカニは、海洋性の脊索動物であるホヤ類の体内に共生することが知られています。このように、カクレガニ科のカニは、多様な宿主との間に独特な生態的な結びつきを形成しており、その生活様式は他の一般的なカニ類とは大きく異なっています。

化石記録

カクレガニ科の進化的な歴史は比較的古くまで遡ることができます。この科に属するカニの化石は、新生代暁新世の初期にあたるダニアン期から発見されています。これは約6600万年前に相当し、現在のカクレガニ科がかなり古い時代から存在していたことを示唆しています。

分類

カクレガニ科は、いくつかの亜科に分けられています。主要な亜科としては、カクレガニ亜科（Pinnotherinae）とマメガニ亜科（Pinnothereliinae）があります。特にマメガニ亜科は多くの属を含み、その多様性が際立っています。

マメガニ亜科に属する主な属としては、Alarconia属、Austinixa属、Glassella属などがあります。また、Indopinnixa属には、クメジママメガニ（Indopinnixa kumejima）やコメツブマメガニ（Indopinnixa oryza）といった種が知られています。

マメガニ属（Pinnixa）は、この科を代表する非常に大きなグループです。この属には、ギボシマメガニ（Pinnixa balanoglossana）、バンズマメガニ（Pinnixa banzu）、アカホシマメガニ（Pinnixa haematosticta）、ヨコナガマメガニ（Pinnixa lata）、ホンコンマメガニ（Pinnixa penultipedalis）、ラスバンマメガニ（Pinnixa rathbuni）、シロナマコガニ（Pinnixa tumida）など、日本でも見られる多くの種が含まれています。また、英語圏ではtube pea crabとして知られるPinnixa chaetopteranaや、mantle pea crabと呼ばれるPinnixa fabaなどもこの属に分類されています。

その他の属として、Pinnotherelia属があり、またウモレマメガニ属（Pseudopinnixa）にはウモレマメガニ（Pseudopinnixa carinata）が、ミナミヨコナガピンノ属（Tetrias）にはミナミヨコナガピンノ（Tetrias fischerii）といった種が確認されています。これらの分類群は、それぞれの形態や寄生する宿主の種類によって区別されています。

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