カグー

カグー：ニューカレドニアの神秘的な鳥

カグー( Rhynochetos jubatus)は、南太平洋の島国ニューカレドニアにのみ生息する、飛べない鳥です。この鳥は、カグー科カグー属に属し、この科、属の唯一の種として知られています。別名カンムリサギモドキとも呼ばれ、そのユニークな姿と生態から、古くから人々の注目を集めてきました。

カグーの姿

カグーは全長約55センチメートルで、灰色の体羽に褐色の斑が混じります。最も特徴的なのは、後頭部から伸びる長い冠羽です。まるで王冠を戴いているようで、威風堂々とした印象を与えます。翼には黒、白、褐色の斑紋が入り、複雑な模様を描いています。くちばしは長く下方に湾曲し、足も頑丈で長く、鮮やかな赤色をしています。虹彩も赤く、これらの赤い色はカグーの印象的な特徴となっています。 また、カグーの足には水かきがなく、趾も小型です。卵は淡褐色で暗褐色の斑点があり、雛の綿羽は褐色で黄色の斑点があります。幼鳥は全体に褐色みを帯びた体色をしています。

カグーの生態

カグーは標高1400メートル以下の森林地帯に生息し、地表で生活しています。飛ぶことができないため、地上を歩き回って生活しています。夜行性または半夜行性と考えられていますが、抱卵期以外では昼間も活動することが確認されています。その名前は、ニューカレドニアでの現地語の呼び名に由来し、その独特な鳴き声にちなむと言われています。外敵に襲われると、冠羽を逆立て、翼を広げて威嚇する行動が見られます。

食性は雑食性で、昆虫、ミミズ、陸棲の巻貝などを食べます。獲物を探す際には足踏みをする行動が見られ、地中にいる獲物も嘴を使って掘り出して食べます。

カグーの繁殖

カグーは卵生で、繁殖期には雌雄が互いに冠羽を逆立てたり翼を広げたりしながら求愛行動を行います。夜間や薄明時にオスが鳴き、それに続いてメスが鳴き交わす独特の求愛行動も知られています。地面に葉や枝を敷いた巣を作り、5月から12月にかけて1個の卵を産みます。抱卵と育雛は雌雄交代で行われ、抱卵期間は約35～40日です。雛は孵化後3日で巣を離れ、3～4ヶ月で独立します。

カグーと人間

カグーはかつて羽毛が装飾品として利用されていましたが、現在ではニューカレドニアの国鳥として保護されています。しかし、森林伐採や鉱山開発による生息地の破壊、そしてイヌ、ネコ、ブタなどの外来種による捕食などにより、その生息数は減少の一途を辿っています。特にイヌによる捕食は大きな脅威となっており、過去の調査では発信機を装着したカグーの多くがイヌによって殺されていることが確認されています。その他、ルサジカによる植生変化や感染症も懸念されています。

カグーの保護のため、現在では野生個体の生態調査や飼育下繁殖による放鳥など様々な保護活動が進められています。1975年からはワシントン条約附属書Iに掲載され、国際的な保護の対象となっています。1991年時点での生息数は654羽以上と推定されていましたが、その後も減少傾向が続いていると考えられます。2019年現在、日本では横浜市野毛山動物園でオス2羽が飼育展示されているのみです。カグーの未来を守るため、継続的な保護活動が不可欠です。

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