カセグレン焦点

カセグレン焦点とは

カセグレン焦点とは、天体望遠鏡などの光学系において、主鏡と副鏡を組み合わせて光を集め、合成焦点を結ぶ観測方式のことです。この方式は、フランスのローラン・カセグレンによって考案されました。

カセグレン焦点の仕組み

反射式望遠鏡では、一般的に凹面鏡である主鏡が光を集め、その焦点（主焦点）に観測装置を設置します。しかし、主焦点は広い視野を観測するのに適している一方、高い空間分解能が必要な観測には不向きです。

そこで、主焦点よりも奥の位置に合成焦点を結ぶ様々な方法が考案されました。その一つがカセグレン焦点です。カセグレン焦点では、主鏡で反射された光を、双曲面形状の凸面鏡である副鏡で再び反射させます。この副鏡によって光は集束され、主鏡の後方に合成焦点が形成されます。この合成焦点で観測を行うことで、高い空間分解能を得ることが可能になります。

もし正立像が必要な場合は、グレゴリー式という凹面鏡と凹面鏡を組み合わせた方式が用いられますが、視野が狭く、遮蔽率が大きくなるという欠点があります。カセグレン焦点は、これらの欠点を補い、より実用的な合成焦点系として広く利用されています。

カセグレン焦点の応用

カセグレン焦点は、その高い性能から様々な望遠鏡に採用されています。代表的なものとして以下の方式があります。

クラシカルカセグレン式: 主鏡に放物面鏡、副鏡に双曲面鏡を用いる最も基本的なカセグレン式です。
リッチー・クレチアン式: 主鏡と副鏡の両方に双曲面鏡を用いる方式で、広い視野で収差の少ない像が得られます。現代の大型望遠鏡に広く採用されています。
ドールカーカム式: 主鏡に楕円面鏡、副鏡に球面鏡を用いることで、製作・調整を容易にした方式です。周辺像が犠牲になるものの、市販の天体望遠鏡の一部で利用されています。
シュミットカセグレン式: 主鏡のF値を小さく抑え、補正板（レンズ）を搭載したカセグレン式です。シュミット式望遠鏡の広視野角とカセグレン式の長焦点系を両立させた方式ですが、補正板の調整に手間がかかるため、近年ではリッチー・クレチアン式に取って代わられつつあります。

カセグレン焦点の利点と欠点

利点:

高い空間分解能が得られる。
望遠鏡の全長を短くできる。
様々な光学系に応用可能である。

欠点:

副鏡による遮蔽のため、光量が減少する。
製造や調整にある程度の精度が求められる。

まとめ

カセグレン焦点は、天体望遠鏡の性能を向上させる重要な技術の一つです。様々な方式が存在し、それぞれの特徴を活かして幅広い観測に利用されています。特に高い空間分解能が要求される観測においては、なくてはならない技術となっています。



参考文献
田中済、『光学系の基本設計』 精密工学会誌 Vol.67 (2001) No.10 P1562-1566, doi:10.2493/jjspe.67.1562
山下卓也、『すばる望遠鏡の第一期観測装置』　精密工学会誌　Vol.67 (2001) No.10 P1579-1583, doi:10.2493/jjspe.67.1579
家正則、『宇宙観測技術の歴史と展望』 計測と制御 Vol.37 (1998) No.12 P815-821, doi:10.11499/sicejl1962.37.815

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