カディスの防衛

カディスの防衛：スルバランが描く歴史的瞬間

フランシスコ・デ・スルバランによる「カディスの防衛」は、1634年に制作された油彩画で、スペインのプラド美術館に所蔵されています。この作品は、1625年にイギリス軍がカディスを攻撃した際、その直前のスペイン軍の様子を描いた歴史的な絵画です。当初はエウヘニオ・カヘスの作品とされていましたが、後にスルバランがマドリードのブエン・レティーロ宮殿の「諸王国の間」を飾る連作の一部として制作したことが判明しました。この連作には、ディエゴ・ベラスケスの「ブレダの開城」やフアン・バウティスタ・マイノの「バイーアの奪還」なども含まれています。

演劇的な構図

「カディスの防衛」は、演劇の舞台のような独特の構成が特徴的です。手前の前景部分では、老練な要塞司令官フェルナンド・ヒロンが椅子に座り、部下たちに指示を与えている様子が描かれています。ヒロンは痛風でほとんど歩けなかったにもかかわらず、冷静に指揮を執っています。その周囲には、戦闘指揮官のディエゴ・ルイスをはじめとする部下たちが、精緻な筆致で描かれています。彼らの衣服の質感や表情、そして身に着けている武具や装飾品に至るまで、細部にわたって丁寧に描写されています。一方、背景には、遠征してきたイギリス軍の艦隊が描かれています。100隻を超える船と1万人の兵士で構成されたイギリス軍は、11月1日にカディス港に侵入し、砲撃の後、エル・プンタル砦を占拠しました。

歴史的背景

この作品は、1625年のウィンブルドン子爵率いるイギリス艦隊によるカディス遠征を題材にしています。イギリス軍はカディスを攻撃しましたが、スペイン軍の激しい抵抗に遭い、最終的には11月8日に撤退を余儀なくされました。この戦闘で、イギリス軍は2000人もの兵士を失ったとされています。スルバランは、この歴史的な出来事を、あたかも舞台の一場面のようにドラマチックに描き出しています。

スルバランの他の作品

スルバランは、「カディスの防衛」以外にもカディスをテーマにした絵画を制作しましたが、残念ながら現存していません。その絵画では、カディスの防衛が成功し、スペインの西インド諸島艦隊がカディスに無事入港する様子が描かれていたと伝えられています。また、「諸王国の間」のために、スルバランは「ヘラクレスの12の功業」をテーマにした10点の連作も制作しており、これらの作品もプラド美術館に所蔵されています。

結論

「カディスの防衛」は、スルバランの優れた画力と歴史的な出来事をドラマチックに表現する才能を示す傑作です。この作品を通じて、17世紀のスペインにおける戦争の様子や、当時の人々の生活を感じることができます。プラド美術館を訪れる際には、ぜひこの作品を鑑賞し、スルバランの芸術世界を堪能してください。

補足

この作品は、当時の戦争の様子を伝える貴重な資料でもあります。
スルバランの作品は、宗教的なテーマを描いたものが多いですが、「カディスの防衛」のような歴史的なテーマを描いた作品も存在します。
* 「諸王国の間」には、他にも多くの歴史的な絵画が展示されています。

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