カナディアン・エクスプレス

『カナディアン・エクスプレス』は、1990年に公開されたアメリカ製作のサスペンス・アクション映画です。ピーター・ハイアムズが監督を務め、脚本と撮影監督も兼任しています。本作は、1952年に製作されたモノクロ映画『その女を殺せ』（原題：The Narrow Margin、日本では劇場未公開）をカラーで、舞台をカナダに移してリメイクした作品として知られています。原案はマーティン・ゴールドスミスとジャック・レナード、オリジナル脚本はアール・フェルトンによるものです。

ストーリー

物語は、ロサンゼルスの高級ホテルの一室で発生した一つの殺人事件から幕を開けます。犠牲となったのは、権力を持つ大物ギャング、レオ・ワッツ（演：ハリス・ユーリン）の顧問弁護士でした。この冷酷な犯罪には、思わぬ目撃者が存在しました。それは、偶然その場に居合わせ、難を逃れるために洗面所に身を隠していた女性、キャロル（演：アン・アーチャー）です。友人を通じて弁護士と初めて会った夜に惨劇に遭遇したキャロルは、自身の命も狙われると直感し、人里離れたカナディアン・ロッキーの山小屋へと逃れ、身を潜めるように暮らしていました。

事件を担当することになったベンティ刑事（演：Ｍ・エメット・ウォルシュ）は、執念深い捜査の末、事件に唯一の目撃者がいたこと、そしてその女性、キャロルがカナダに潜伏していることを突き止めます。彼は、証人としてキャロルを保護し、法廷での証言を取り付けるため、地方検事補であるロバート・コールフィールド（演：ジーン・ハックマン）と共に、キャロルが隠れ住む山小屋へと向かいます。

山小屋でキャロルを見つけ出したコールフィールドは、彼女に証言台に立つよう説得を試みます。しかし、キャロルはギャング組織からの苛烈な報復を恐れ、頑なに協力を拒否します。二人の間で緊張が高まるその時、突如として武装ヘリコプターが山小屋に襲来し、激しい銃撃を開始します。これは、キャロルの居場所を特定した組織が送り込んだ追っ手でした。不意を突かれたベンティ刑事は、この襲撃により命を落としてしまいます。

間一髪で難を逃れたコールフィールドは、まだ証言をためらうキャロルを説得し、共に険しい山道を逃走します。彼らの頭上からは、執拗なヘリコプターの追跡が続きます。度重なる危機を寸前で回避しながら、二人はバンクーバーへ向かうカナダ横断特急列車に乗り込むことに成功します。これでようやく安全圏に到達したかと思われたその瞬間、組織が送り込んだ冷酷なプロの殺し屋二人組が、既に同じ列車内に乗り込んでいることが明らかになります。

雄大なカナダの景色の中を疾走する豪華列車は、外部から閉ざされた空間となります。この密室状態の中で、コールフィールドとキャロルは、いつ姿を現すか分からない殺し屋たちから逃れながら、目的地を目指すことになります。列車内での緊迫した駆け引きと、追いつ追われつのスリリングな展開が、物語の核心を成します。果たして二人は無事にバンクーバーにたどり着けるのか、そしてキャロルは法廷で証言することができるのか、予測不能なサスペンスが繰り広げられます。

スタッフ・キャスト

本作で監督・脚本・撮影監督という三つの主要な役割を担ったピーター・ハイアムズは、自身の持ち味であるスピーディな演出とシャープな映像で作品に独特の緊迫感をもたらしています。

主要なキャストは以下の通りです。

ロバート・コールフィールド検事補：ジーン・ハックマン
キャロル・ハニーカット：アン・アーチャー
ベンティ刑事：Ｍ・エメット・ウォルシュ
レオ・ワッツ：ハリス・ユーリン

製作はジョナサン・A・ジンバート、製作総指揮はマリオ・カサールとアンドリュー・G・ヴァイナが務めました。音楽はブルース・ブロートンが担当し、作品全体の緊張感を高める重要な要素となっています。編集はジェームズ・ミッチェル、プロダクション・デザインはジョエル・シラーが手掛けています。

『カナディアン・エクスプレス』は、閉鎖空間における追跡劇という古典的なサスペンスの要素を、豪華列車という舞台と広大な自然を背景に描き出し、手に汗握るエンターテインメント作品に昇華させています。

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