カフワ・アラビーヤ

アラビアコーヒー：砂漠の恵みと寛容の象徴

アラビアコーヒーは、アラブ諸国で広く愛飲されているコーヒーの総称です。国や地域によって呼び名も異なり、レバノンでは「カフウィ」、エジプトでは「アフワ」と呼ばれ、日本や英語圏では「アラビアコーヒー」として知られています。単なる飲み物という枠を超え、アラブ文化における重要な役割を担う、伝統的な一杯と言えるでしょう。

伝統的な淹れ方：イブリークと沸騰の技

アラビアコーヒーの淹れ方は、トルココーヒーとよく似ています。まず、コーヒー豆を細かく挽きます。そして、イブリークと呼ばれる小さな取っ手付きの鍋に挽いた豆と水を入れ、数回沸騰させます。この工程でコーヒー豆の豊かな香りと深い味わいを引き出します。イブリークは、細口のポットを意味するアラビア語の言葉に由来しています。沸騰後、小さなカップに注いでいただきます。家庭では、飲む度に豆を煎って挽く習慣も残っており、特にベドウィンの人々には、この伝統が大切に受け継がれています。スーダンでは、煎りから抽出までの過程そのものの美しさも高く評価されています。

文化と風味：砂糖とカルダモンの香り

アラビアコーヒーは、砂糖を加えて飲むのが一般的です。さらに、カルダモンなどのスパイスを加えて風味を豊かにすることもあります。イェメンでは、コーヒー豆の果肉と内果皮のみを煎って作られた「カフワ・キシュリーヤ」と呼ばれる独特のコーヒーも存在します。

カフェ（アラビア語でマクハ）で楽しむのはもちろん、家庭でも日常的に飲まれています。ベドウィンの人々は、来訪者をもてなす際にアラビアコーヒーを振る舞う習慣があります。この習慣は、アラブ文化における温かいおもてなしと寛容さを象徴する行為として、2015年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。

ユネスコ無形文化遺産：寛容さの象徴

2015年、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、オマーン、カタールの共同申請により、「アラビアコーヒー、寛容さの象徴」としてユネスコ無形文化遺産に登録されました。これは、アラビアコーヒーが単なる飲み物ではなく、アラブ文化における重要な社会習慣であり、人々の交流や寛容さの象徴であることを世界的に認められたことを意味します。ベドウィンによる来訪者へのもてなしとしてのアラビアコーヒーの提供は、この文化遺産登録の重要な要素となっています。

まとめ：砂漠の恵みと文化の深淵

アラビアコーヒーは、その独特の淹れ方、豊かな風味、そして深い歴史と文化に裏打ちされた、アラブ世界を代表する飲み物です。ユネスコ無形文化遺産に登録されたことからも、その文化的価値の高さが伺えます。砂糖とスパイスの風味、そして人々の温かいもてなしと共にあるアラビアコーヒーは、砂漠の恵みと文化の深淵を味わうことができる、特別な一杯と言えるでしょう。

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