カマツカ (植物)

カマツカ（鎌柄）

カマツカ（学名: Pourthiaea villosa）は、バラ科カマツカ属に属する落葉性の小高木です。その名前は、かつてこの木の材が鎌の柄として利用されたことに由来します。別名としてウシゴロシ、ウシコロシとも呼ばれています。中国名は毛葉石楠です。

分布と生育環境

カマツカは、日本の北海道から九州にかけての平地や山地に分布しています。国外では、中国、朝鮮半島、インドシナ半島の高地、ブータンなどにも広く分布しています。群生することは少なく、数はあまり多くありません。日当たりが良く、水はけの良い環境を好みます。原生林よりも、林縁や稜線、若い二次林、雑木林などでよく見られます。変種のワタゲカマツカは、カマツカよりも寒冷地に自生することが多いとされています。

特徴

カマツカは、落葉広葉樹の小高木で、通常は高さ2 - 4 m、直径3 - 10 cm程度の低木ですが、稀に高さ5 - 7 m、幹の直径が20 cm以上に達するものも存在します。根元から複数の幹が立ち上がる株立ちになることが多いですが、幹が1本だけの単木になることもあります。枝には、長く伸びて成長を促す長枝と、そこから出る非常に短い短枝があり、花は短枝にのみ咲きます。樹皮は暗い灰色から灰褐色で滑らかですが、成木になると横方向に筋が目立つようになります。若い枝には、無毛または細毛が見られます。成長は比較的遅く、直径15 cm程度になるまでに50年以上を要することもあり、年輪幅は非常に狭いです。

葉は倒卵形で、長さ3 - 9 cm、通常は5 cm前後で、縁には鋸歯があり、先端は少し尖っています。長枝では互い違いに生え、短枝では束になって輪生します。葉の裏に毛がないもの（カマツカ）、短い綿毛が密生しているもの（ワタゲカマツカ）、その中間の特徴を持つもの（ケカマツカ）が知られており、変異は連続的です。秋には紅葉し、主に橙色、しばしば赤色や黄色に色づきます。紅葉した葉は、褐色を帯びる傾向があります。

花期は4 - 6月で、春から初夏にかけて白い花を咲かせます。花弁は5枚で、リンゴの花を小さくしたような形をしています。短枝の先に20輪ほどまとまって咲き、ハナカミキリなどの昆虫がよく訪れます。

果実は梨状果で、長さ7 - 10 mmほどの倒卵形をしており、明瞭な果柄があります。秋から晩秋にかけて赤色に熟し、少し甘酸っぱく食用になりますがあまり美味しくありません。果実は初冬まで残ることもあります。

冬芽は円錐形で小さく、4 - 5枚の芽鱗に包まれた赤褐色で、少し光沢があります。枝の先に仮頂芽がつき、側芽は枝に互生します。仮頂芽と側芽の大きさはほぼ同じです。葉痕は浅いV字形や三角形をしており、維管束痕が3個つきます。葉痕の基部は紅紫色をしています。

利用

若葉は山菜として食用にされることがあります。

材は散孔材で、辺材は淡黄褐色、心材は淡黄褐色、淡紅色、暗赤褐色と変化に富んでいます。辺材と心材の境界は不明瞭なことが多いです。気乾比重は0.83 - 1.0と非常に重く、硬く、緻密で肌目は精です。強靭で弾力性に富み、折れにくいため、玄翁、鑿、鎌、鉈、斧など工具や農具の柄に利用されます。特に石工の玄翁の柄としての酷使に耐えるほぼ唯一の国産材として定評があります。

石工職人自身によって選択的・計画的に伐採・保存されるほか、少ないながら原木（小径丸太）も流通しています。耐朽性は低い方で、乾燥した状態では長期間強靭さを保ちますが、湿った場所に放置されると容易に腐朽します。薪炭材やシイタケのホダ木に利用されるという記述も見られますが、選択的に利用されているというより、雑多な広葉樹の中でそれらの用途に適するとして利用されている多くの樹種のひとつと考えられます。

樹形が美しく、可憐な花や果実をつけるため、庭木、公園樹、盆栽としても利用されます。

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