カミーユ・シルヴィ

カミーユ・シルヴィ：外交官から写真家へ、そして波乱の生涯

カミーユ・シルヴィ (1834-1910) は、19世紀を代表する写真家の一人です。フランス、ノジャン＝ル＝ロトルー生まれの彼は、当初は外交官を目指していましたが、その道を捨て、写真家への転身を遂げます。友人のオランプ・アグアード公爵から写真技術を学び、1858年には風景写真を発表してデビュー。フランス写真家協会にも加入し、その後ロンドンに移住します。

ロンドンでの成功と大量複製ポートレート

ロンドンのベイズウォーター地区にスタジオを開設したシルヴィは、芸術性と商業性を巧みに融合させた独自のスタイルを確立しました。特に名刺サイズのポートレート写真は、1860年代に大きな人気を博します。彼は、1859年から1868年までの間に17,000枚ものポートレートを撮影し、それらを元にした複製写真を100万枚以上も販売したと伝えられています。この大量生産と販売は、当時の写真技術と商業戦略の高度な融合を示す成功例と言えるでしょう。彼の作品は、単なる記録写真ではなく、被写体の個性を捉えた芸術作品としても高く評価されています。

突然の英国離れと晩年

しかし、1868年、シルヴィは突如として英国を去ります。その理由は明らかではありませんが、その後、普仏戦争に従軍したのち、約30年間を病院で過ごすことになります。躁鬱病を患っていたと伝えられています。戦争での功績が認められ、レジオンドヌール勲章シュヴァリエを受章するなど、波乱に満ちた人生を送りました。晩年はサン＝モーリスで過ごし、1910年に75歳でこの世を去りました。

シルヴィの写真作品とその後

カミーユ・シルヴィの写真作品は、現在でも高い評価を受けています。彼の作品は、19世紀の英国社会の肖像として、また写真芸術の新たな可能性を示した重要な記録として、歴史的・芸術的価値を有しています。彼のポートレート写真は、被写体の表情や仕草を繊細に捉えており、人物の個性を際立たせています。また、風景写真も、自然の美しさと静けさを表現した秀作が多く残されています。

彼の作品は、フランス国立図書館の電子サイト「Gallica」や、英国のナショナル・ポートレート・ギャラリーなどで閲覧することが可能です。ナショナル・ポートレート・ギャラリーには、3,342点ものシルヴィの作品が所蔵されているとのことです。これらの資料は、シルヴィの芸術性を深く理解する上で貴重な資源となるでしょう。

参考文献

Cumming, Laura (2010年7月4日). “Camille Silvy: Photographer of Modern Life; Fiona Banner: Duveens Commission 2010”. 2016年5月5日閲覧。
Baldwin, Gordon (1999). Masterpieces of the J. Paul Getty Museum: Photographs. J. Paul Getty Museum.
“he Correspondence of James McNeill Whistler”. University of Glasgow. 2016年5月5日閲覧。
Haworth-Booth, Mark (2010年). “Camille Silvy photographe de la vie moderne Catalogue de l'exposition”. Jeu de Paume. 2016年5月5日閲覧。
“Camille Silvy sur Gallica”. 2016年5月5日閲覧。
“Camille Silvy (1834-1910), Photographer”. National Portrait Gallery. 2016年5月5日閲覧。

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