カヤ (ケニア)

ケニアのカヤ：ミジケンダ族の聖なる森と要塞村落

ケニア沿岸部の山間部には、かつてミジケンダ諸民族の文化的・生活の中心地として栄えた「カヤ」と呼ばれる独特の村落遺跡が存在します。円形状の集落は、外側を原生林が取り囲む構造をしており、2008年にはユネスコの世界遺産に登録されました。さらに、カヤとその周辺の森に関連するミジケンダ族の伝統と慣習は、2009年に無形文化遺産として登録されています。

カヤの構造と信仰

カヤの中心部には、フィンゴと呼ばれる宗教的に重要な遺物が埋められています。このフィンゴは、ミジケンダ族の起源神話にも繋がる重要な存在であり、集落の住居や集会場はフィンゴを中心に対称的に配置されています。カヤを取り囲む森林は、2本の通路を除き、外部との接触を遮断した原生林です。この森は祖先の霊が出没する聖なる場所と信じられており、材木の伐採などは厳しく禁じられていました。このような聖なる森と要塞化した村落という独特の構造は、ミジケンダ族の社会構造や信仰体系を反映しています。

歴史と起源神話

ミジケンダ族が東アフリカ海岸部の内陸部に移動してきたのは、16世紀から17世紀頃と考えられています。彼らの起源神話には、「シュングワヤ」と呼ばれる始まりの地から追われたという伝説が残されていますが、シュングワヤの正確な位置は現在も不明です。この起源神話は、カヤの構造と深く結びついており、中心に埋められたフィンゴも、シュングワヤから持ち込まれたものだと伝えられています。17世紀以降に建設されたカヤも存在しますが、それらはフィンゴの存在の有無など、本来のカヤとはいくつかの違いが見られます。19世紀後半以降、物理的なカヤは衰退していきましたが、ミジケンダ族の文化的アイデンティティにおいて、カヤは現在も重要な意味を持ち続けています。

世界遺産登録

カヤの世界遺産登録は、2006年に申請が行われ、2007年の世界遺産委員会では情報照会とされましたが、翌2008年の委員会で正式に登録が決定されました。世界遺産基金からの助成金も活用され、登録への取り組みが行われました。

登録対象

世界遺産登録対象となっているのは、ケニア海岸州にある以下の9カ所です。

ギリアマ人のカヤ (Kaya Giriama)
ジバナ人のカヤ (Kaya Jibana)
カンベ人のカヤ (Kaya Kambe)
カウマ人のカヤ (Kaya Kauma)
リベ人のカヤ (Kaya Ribe)
ラバイ人のカヤ群 (The Rabai Kayas)
デュルマ人のカヤ群 (The Duruma Kayas)
キノンド人のカヤ (Kaya Kinondo)

このうち、「ギリアマ人のカヤ」「ジバナ人のカヤ」「カンベ人のカヤ」「リベ人のカヤ」「キノンド人のカヤ」が本来的なカヤとされ、残りは二次的なカヤと分類されています。

世界遺産登録基準

カヤは、以下の世界遺産登録基準を満たしているとして登録されました。

(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠
(5) ある文化（または複数の文化）を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例
* (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの

カヤは、ミジケンダ族の歴史、文化、信仰を理解する上で非常に重要な遺跡であり、その保護と保存が国際的に認められています。

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