カラスバト

カラスバト（烏鳩）

カラスバト（Columba janthina）は、ハト目ハト科カワラバト属に分類される鳥類です。全身が光沢のある黒い羽毛で覆われているのが特徴で、その美しい姿が名前の由来となっています。

分布

カラスバトは、東アジアの沿岸部や島嶼に生息しています。いくつかの亜種に分かれており、それぞれ分布域が異なります。

C. j. janthina カラスバト：本州中部以南、四国、九州、伊豆諸島、隠岐、沖縄諸島などに分布。
C. j. nitens アカガシラカラスバト：小笠原諸島、火山列島に生息する固有亜種。
C. j. stejnegeri ヨナクニカラスバト：先島諸島に生息する固有亜種。

形態

全長は約40cmで、やや細身の体型をしています。頭部は比較的小さく、尾羽はやや長めです。全身を覆う光沢のある黒い羽毛が特徴的です。

亜種によって頭部の色や嘴の色が異なります。

カラスバト：頭部は黒い羽毛で覆われ、嘴は淡青色または暗青色をしています。
アカガシラカラスバト：頭部は赤紫色の羽毛で覆われ、嘴は黒色をしています。
ヨナクニカラスバト: 他の亜種と比較して、全体的にやや小型である。

生態

海岸や島嶼の常緑広葉樹林に生息し、ゆっくりとした飛翔と滑空を繰り返します。食性は植物食傾向の強い雑食で、果実、花、ミミズなどを食べます。地表でも樹上でも採食を行います。

繁殖形態は卵生で、樹上や岩の上、樹洞などに木の枝を組み合わせた巣を作り、2月から9月にかけて1回に1個の卵を産みます。

人間との関係

カラスバトは、ハト科の鳥類としては珍しく、人間に対する警戒心が非常に強いことで知られています。そのため、生息地であっても、その姿を肉眼で捉えることは容易ではありません。

しかし、近年、開発や人為的に移入されたヤギによる生息地の破壊、ネコやネズミなどによる捕食などにより、生息数は減少しています。そのため、以下の亜種が絶滅危惧種として指定され、保護対策が進められています。

アカガシラカラスバト：絶滅危惧IA類 (CR)
ヨナクニカラスバト：絶滅危惧IB類 (EN)
* カラスバト：準絶滅危惧（NT）

小笠原諸島では、ノネコの駆除対策が行われた結果、アカガシラカラスバトの生息数が回復傾向にあります。これは、地道な保護活動が効果を発揮した好例と言えるでしょう。

カラスバトは、日本の自然を象徴する貴重な鳥類の一つです。今後の保護活動の推進が期待されます。

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