カラビナ

カラビナとは

カラビナ（ドイツ語: Karabiner）は、開閉できるゲートがついた金属製のリングです。もともとは、銃をベルトに吊るすための道具として使われていました。Karabinerhakenというドイツ語は、Karabiner（カービン銃）とHaken（フック）という言葉が組み合わさってできたものです。

現在では、主に登山用具として使われています。ロープとハーネス、ハーケンやクライミングチョックなどの支点を素早く確実に繋ぐことができるため、登山には欠かせない道具となっています。

歴史

初期の歴史

カラビナの原型は、1616年の「Kriegskunst zu Pferd（馬上武術）」という書物に登場しています。しかし、この書物では機構についての詳しい説明はなく、詳細は不明です。

1785年の「Oeconomischen Encyclopädie（経済百科事典）」には、「Karabiner-Haken」として、現在のカラビナと基本的には同じ機構のものが紹介されています。ただし、この頃のカラビナは、バネがリングの内側に付けられていました。

登山への普及

登山にカラビナが使われるようになる前は、ハーケンで身体を確保するために、「身体に結びつけたザイルを一時解いて、ハーケンの環や穴に通す」という非常に面倒で危険な方法がとられていました。また、補助ロープで作った輪をかけてハーケンとザイルを接続する方法もありましたが、輪を大きめに作って「輪抜け」と称して身体ごと潜り抜けるという、現在では考えられないような危険なことも行われていました。

カラビナが登山に使われるようになったのは、19世紀後半のことです。1853年にベルリン消防隊の刊行物にカラビナの図入り解説が初めて現れ、「ベルリン・ベルト・フック」と呼ばれていました。その後、軽量化されたマギウス製「ウルム・ベルト・フック」が使用されるようになり、それを見た登山家のオットー・ヘルツォークが登山用に改良したものが、現在使われているカラビナの原型となりました。

カラビナが普及するにつれて、その便利さと安全性が認識され、岩登りが大きく発展しました。

日本での歴史

日本でのカラビナの生産は、ヨーロッパから実物が手に入らず、開閉部の仕組みが分からなかったため、かなり遅れました。1923年にロック・クライミング・クラブの湯村という人物が初めて試作しましたが、この時点ではバネが内蔵されておらず、ネジを外す形式だったため、手間がかかりました。

形状

登山や救助用のカラビナには、主に3種類の形状があります。

O型（オーバル型）
左右対称なカラビナで、厚みのある器具と併用できます。
洋梨形（茄子型）
開口部が広いため、太めの支持物やケーブルなどに直接取り付けられます。
D型
アルミカラビナの中で最も強度が高い形状です。D環とも呼ばれます。

安全環

カラビナの開口部（ゲート）には、安全環（ゲートが勝手に開かないようにロックする装置）が付いています。安全環には、主に3種類があります。

スクリューロック
ねじ式になっている安全環で、数回まわして開閉します。
ボールロック
オートロック式の安全環で、ボタンを押して半回転させると簡単に開けられます。指を離せば勝手に閉まります。
トライアクトロック
オートロック式の安全環で、一度安全環を上方へ引き上げてから半回転させます。指を離せば勝手に閉まります。

登山用ではない、キーホルダー用のカラビナも販売されていますが、耐久性や強度が低いため、購入する際は注意が必要です。

強度

カラビナの強度は、カラビナ本体に刻印されています。単位はkNで示され、静荷重を想定した値です。刻印された強度は破断強度であり、その値で壊れるということを示しています。

カラビナには、以下の3種類の強度が刻印されています。

メジャーアクシス
縦方向の荷重に対する強度で、カラビナが最も強度を発揮できる向きの荷重を示します。
マイナーアクシス
横方向の荷重に対する強度で、カラビナが最も強度の低い向きの荷重を示します。
オープンゲート
ゲートが開いた状態での強度で、メジャーアクシスの方向でも著しく強度が低下します。

また、カラビナに複数のロープやスリングを括り付けて使用し、それらが一直線上ではなく二直線以上の方向に荷重が分散した時にも、カラビナの強度が低下します。

注意点

カラビナを使用する際は、以下の点に注意が必要です。

カラビナの強度を正しく理解し、安全な使い方を心がける。
カラビナに異常がないか、使用前に必ず確認する。
複数のカラビナを連結して使用しない。
荷重が分散するように、カラビナを使用する。
破損したカラビナは、絶対に使用しない。

カラビナは、登山において非常に重要な道具ですが、使い方を間違えると危険を伴います。正しい知識と使い方を身につけ、安全な登山を楽しみましょう。

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