カラーテレビゲーム

カラーテレビゲーム：任天堂初の家庭用ゲーム機

1977年、任天堂が初めて家庭用ゲーム機市場に参入したのが「カラーテレビゲーム」シリーズです。このシリーズは、同社が後にゲーム業界を牽引する存在となるための重要な足がかりとなりました。

カラーテレビゲームの誕生

「カラーテレビゲーム」は、もともと電卓メーカー「システック」と三菱電機が共同開発していた技術を基にしています。システックの倒産後、三菱電機が任天堂に企画を持ち込み、改良を経て発売に至りました。最初に発売されたのは「カラーテレビゲーム15」で、廉価版として「カラーテレビゲーム6」も同時に発売されました。

ゲーム内容

内蔵されたゲームは、主に『ポン』のようなテニスや卓球ゲームです。「テニスA」「テニスB」「ホッケーA」「ホッケーB」「バレーA」「バレーB」「ピンポン」「射撃ゲーム」の8種類のスイッチがあり、射撃ゲーム以外はシングルスとダブルスを選択できるため、合計15種類のゲームを楽しむことができました。コントローラーは本体にケーブルで接続されており、2人で対戦プレイが可能でした。

当時のテレビゲームは、現在のゲーム機のようにソフトウェアを交換するのではなく、内蔵された電子回路によってゲーム内容が切り替わる仕組みでした。これは、初期のビデオゲーム機の特徴です。家庭用テレビに接続してプレイする方式で、当時としては画期的なものでした。

コントローラーの特徴

初期型（Model CTG-15S 黄色筐体）のコントローラーには、可変抵抗器ではなく、マイクロスイッチが内蔵されたつまみが使用されていました。この方式は、少しひねるだけで操作ができたものの、パドルの動きが等速に限定され、素早い操作には対応できませんでした。その後、改良型（Model CTG-15V オレンジ色筐体）では、一般的なボリューム式コントローラーに変更されました。

ACアダプター

後発のカラーテレビゲームシリーズと共用可能なACアダプターには、同じ品番で大きさと定格入力容量が異なる2種類が存在しました。

後発メーカーとしての苦悩

任天堂は家庭用テレビゲーム業界では後発であり、自社内に開発スタッフも十分に揃っていませんでした。当時、エポック社が「テレビテニス」で市場を席巻しており、その価格が2万円前後だったため、任天堂は価格競争に打って出るしかありませんでした。「カラーテレビゲーム6」は、機能を大幅に削って安価に製造されたため赤字販売でしたが、その戦略によって消費者の目を引きつけました。そして、より多くのゲームが遊べる「カラーテレビゲーム15」を購入させるという戦略が成功しました。当時の他社は、9,800円という価格に二の足を踏み、参入を断念したと言われています。

エポック社も対抗して「システム10」とその廉価版「M2」を発売しましたが、任天堂の製品はコンパクトで扱いやすいことから一定の評価を獲得しました。この「カラーテレビゲーム6」と「15」の合計販売台数は約80～100万台に達し、任天堂が「安価なハードウェアで売り抜ける」という路線を決定づける要因となりました。

バリエーション

「カラーテレビゲーム6」は、「バレーボール」「ホッケー」「テニス」のシングルスとダブルスのみがプレイ可能で、「カラーテレビゲーム15」に比べてゲーム数が大幅に削減されています。また、コントローラーも本体直付けだったため、定価で5,000円以上の価格差がありました。これは、任天堂の販売戦略によるものです。

後続製品

「カラーテレビゲーム」シリーズの成功により、任天堂は本格的にテレビゲーム業界に参入します。以下のゲーム機は三菱電機との共同開発であり、ここで得た経験と人脈が、後の「ファミリーコンピュータ」開発につながりました。

レーシング112

1978年に発売されたトップビューのレーシングゲーム。112種類のゲームが遊べると宣伝されましたが、実際には同じゲームの設定を変えただけのバリエーションでした。そのため、消費者にはすぐに飽きられてしまいました。

ブロック崩し

1979年3月末に発売された、アタリのアーケードゲーム「ブロック崩し」の家庭用版です。任天堂が初めて自社開発したゲームでしたが、開発の遅れから販売は伸び悩みました。

コンピュータTVゲーム

1980年に発売された、アーケードゲーム「コンピューターオセロゲーム」の家庭用版です。基板はアーケードのものを流用していますが、電子オセロゲームしか遊べない上に価格も48,000円と高額だったため、販売は振るわず、幻のゲーム機とも呼ばれています。

現代への影響

「カラーテレビゲーム」シリーズは、任天堂がゲーム業界で成功を収めるための第一歩でした。このシリーズで得た経験は、後のファミリーコンピュータやその他のゲーム機の開発に活かされ、今日の任天堂の地位を築く上で非常に重要な役割を果たしました。

また、カラーテレビゲームは、その後のゲーム業界の方向性にも大きな影響を与えました。特に「安価なハードウェアで多くの人にゲームを届けたい」という任天堂の理念は、今日のゲーム業界の基盤となっています。

関連情報

TV FUN - 同時期にトミー工業から発売されたテレビゲームシリーズ。
TV JACK - 同時期にバンダイから発売されたテレビゲームシリーズ。
システム10 (ゲーム機) - 同時期にエポック社から発売されたテレビゲーム。
おどる メイド イン ワリオ - プチゲームの一つとして、カラーテレビゲーム6が登場。
大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ - カラーテレビゲーム15がアシストフィギュアとして登場。

参考資料

『エレクトニック・ゲーム・コレクターズ』オークラ出版、2000年2月。
『テレビゲームの世界』ゲームス・スクエア、1997年8月。
高野雅晴 (2008年9月25日). “【任天堂「ファミコン」はこうして生まれた】第2回：電卓をあきらめてゲーム機ヘ”. 日経トレンディネット.

この詳細な情報が、カラーテレビゲームの歴史と、それがゲーム業界に与えた影響を理解する助けとなれば幸いです。

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