カリシュ

ポーランド最古の都市、カリシュ

カリシュは、ポーランド中部のヴィエルコポルスカ県南東部に位置する都市で、プロスナ川沿いに発展しました。近隣の都市とコネベーションを形成し、重要な工業と通商の中心地として知られています。また、伝統的な民俗芸術の中心地でもあり、歴史と文化が深く根付いた街です。

古代から中世の繁栄

カリシュはポーランド最古の都市の一つと考えられており、古代ローマの地理学者プトレマイオスが「カリシア」として記録しています。当時はゲルマニアの琥珀の道の中継地であり、ヴァンダル族の一派であるディドゥン族の領土でした。2世紀頃から人が定住し、ローマ帝国の商隊が立ち寄る場所として栄えました。

中世には、9世紀頃に城代の直轄区として整備され、1106年にはポーランド王ボレスワフ3世によって征服されました。13世紀にはマクデブルク法に基づく特権都市となり、急速に発展。ヴィエルコポルスカ地方有数の裕福な町となり、ポーランド王家であるピャスト家の分枝によって治められる独立公国を形成しました。再統合後は、織物業と林業の中心として知られ、文化の中心地としても栄えました。

また、ボヘミア兄弟団やユダヤ人など、多様な人々がカリシュに移住し、その発展に貢献しました。1264年にはユダヤ人の自由と安全を保障する「カリシュの法令」が発布され、ポーランドがヨーロッパ最大のユダヤ人人口を抱える国となるきっかけとなりました。

13世紀末には、ポーランドの地方行政区画の一つであるカリシュ県の首都となり、14世紀にはドイツ騎士団との条約がこの地で結ばれました。王立特権都市として、市は繁栄を極め、15世紀にはタウンホールが完成しました。

近代の変遷

16世紀にはイエズス会がカリシュに神学校を開校し、教育の中心地としての役割も担いました。しかし、近隣のポズナンが台頭するにつれて、カリシュの地位は徐々に低下していきました。

18世紀末には大火に見舞われ、第二次ポーランド分割によってプロイセン王国の支配下に入りました。19世紀初頭にはワルシャワ公国に編入されましたが、ナポレオン戦争後にロシア帝国に併合されました。ロシア帝国領となると、プロイセン国境に近いことから経済成長が促進され、多くの移民が集まりました。1902年にはワルシャワ、ウッチと繋がる鉄道が開通し、交通の要所としての役割も強まりました。

20世紀の苦難と復興

20世紀に入ると、カリシュは二度にわたる世界大戦で大きな被害を受けました。第一次世界大戦ではドイツ軍によって破壊され、多くの市民が犠牲となりました。第二次世界大戦ではナチス・ドイツによって占領され、ユダヤ人の虐殺や住民の強制労働が行われました。

戦後、カリシュは復興を遂げ、1975年にはカリシュ県の県都に定められましたが、1998年に廃止されました。1991年には特権都市となったことを記念する祝日が制定され、カリシュ司教座の所在地ともなりました。

現在のカリシュ

カリシュは、現在もヴィエルコポルスカ県の重要な都市として発展を続けています。教育の中心地でもあり、多くの幼稚園、小学校、中学校、大学が存在します。経済面では、ピアノ製造のカリシア、食品製造のWiniaryなど、ポーランドを代表する企業の本社が置かれています。

また、MKSカリシュ（ハンドボール）、SSKカリシア・カリシュ（女子バレーボール）、KKSカリシュ（サッカー）などのスポーツクラブも活発に活動しています。

カリシュは、その長い歴史の中で、様々な困難を乗り越えながら、常に発展を続けてきました。歴史的建造物や文化的な施設も多く、観光地としても魅力的な都市です。

主要産業

ピアノ製造: Calisiaブランドで知られるピアノ工場は、カリシュの象徴的な存在です。
食品製造: Winiary（現在はネスレ傘下）は、ポーランドを代表する食品メーカーです。
繊維産業: ビッグ・スター・ジーンズの工場があり、繊維産業も盛んです。
航空機エンジン製造: WSK-Kaliszとプラット&ホイットニー・カリシュの工場があり、航空機エンジン製造も重要な産業です。

姉妹都市

カリシュは、様々な都市と姉妹都市提携を結び、国際交流も盛んに行っています。



カリシュは、古代からの歴史と文化を今に伝えるポーランドの重要な都市です。訪れる人々は、その歴史と文化、そして多様な産業に触れることができるでしょう。

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