カリン (マメ科)

カリン（花梨、学名：Pterocarpus indicus）

カリンは、マメ科に属する広葉樹で、別名インドシタンまたはインドカリンとも呼ばれています。日本の八重山諸島に分布する近縁種、ヤエヤマシタン（Pterocarpus vidalianus）とは異なり、カリンは主に東南アジアの熱帯雨林に自生しています。具体的には、タイやミャンマーからフィリピン、ニューギニアにかけて見られる植物です。

特徴

カリンは、金木犀に似たオレンジ色の小さな花を咲かせ、その芳香は特に魅力的ですが、花の寿命は短く、通常1〜2日ほどです。この樹種は緑化活動や街路樹、公園などで多く利用されているため、シンガポールのオーチャード通りや、バンコク、ホーチミン、クアラルンプールなどの都市でもよく見かけます。また、カリンはフィリピンの国樹であり、タイのチョンブリー県やプーケット県の県樹としても認識されています。

地元では、フィリピンでは「ナーラ」、ミャンマーでは「バダウッ」、マレーシアでは「セナ」、パプアニューギニアでは「ニューギニアローズウッド」、インドネシアでは「ソノクンバン」または「アンサナ」という名称で親しまれています。このように、地域によって異なる呼称があります。また、カリンは、ビルマカリン（Pterocarpus macrocarpus）やアフリカンパドゥク（Pterocarpus soyauxii）といった近縁種も存在します。

用途

カリンは、古くからその木材が唐木細工に利用されてきました。心材は通常、黄色がかった紅褐色や桃色の暗褐色を呈し、特有のバラの香りが特徴的です。カリンの木材からは赤色染料が得られることもあり、特にその色彩は美しさを引き立てます。また、木材を削り、試験管に水を入れて太陽の光に当てると、蛍光を放つことで知られています。

この貴重な木材は、家具や仏壇、床柱、床框、装飾品、楽器、さらにはブラシの柄など幅広い用途に活用されています。カリンはシタンに似ているため、代用材としても使用されることがあります。歴史的には16世紀から18世紀のヨーロッパにおいて、利尿薬として利用されたこともあります。

保全の現状

しかしながら、カリンはその美しい木材の需要により、伐採が続いています。特に、違法伐採が行われている地域もあり、開発行為によって自生地の環境も脅かされています。たとえば、ベトナムでは300年前にこの植物が絶滅した可能性があり、スリランカでの大規模な調査でも確認されていません。マレー半島の個体群やインド、インドネシア、フィリピンの個体群も著しく減少しています。

ニューギニアに残る最大の個体群も、伐採による影響を受けており、国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは絶滅の危機に瀕しているとされています。また、ヤエヤマシタンも伐採が進み、絶滅危惧IA類に指定されていることが懸念されています。このように、カリンを含む樹種の保全は非常に重要な課題となっているのです。

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