カルロ・ペリグリーニ

カルロ・ペリグリーニ：19世紀ロンドンの風刺画の巨匠

カルロ・ペリグリーニ (1839-1889) は、19世紀のロンドンを代表する風刺画家です。イタリア、カプアに生まれ、裕福な家庭で育ちました。父は代々続く地主、母はメディチ家の血を引くと言われています。しかし、ペリグリーニの人生は、裕福な出自とは対照的に奔放で、型にはまらないものでした。

イタリアからロンドンへ：波乱に満ちた若き日々

若い頃から、メルキオッレ・デルフィーコやオノレ・ドーミエといった巨匠の影響を受け、ナポリ社会を風刺する作品を描いていました。ジュゼッペ・ガリバルディとのいざこざを語ることもありましたが、その真偽は定かではありません。妹の死など、私生活の不幸が続き、1864年、ペリグリーニはイタリアを離れ、スイスとフランスを経てロンドンへ渡ります。ロンドン初期の生活は貧しかったと語られていますが、これもまた彼自身の作り話であった可能性も指摘されています。しかし、彼はその後、プリンス・オブ・ウェールズとも親交を深めたと言われています。

ヴァニティ・フェアでの成功と、多様な交友関係

ロンドンでペリグリーニは、雑誌『ヴァニティ・フェア』のオーナー、トーマス・ボウルズと出会い、同誌の風刺画家として活躍を始めます。当初は「Singe」という筆名を使用していましたが、後に「Ape（アープ）」として知られるようになります。「アープ」はイタリア語で「蜂」を意味します。1869年から20年以上にわたって『ヴァニティ・フェア』に作品を提供し、絶大な人気を博しました。特に1869年のベンジャミン・ディズレーリの風刺画はカラー・リトグラフで掲載されるなど、その人気ぶりは顕著でした。『ヴァニティ・フェア』が40年以上も刊行され、2000人以上の肖像が掲載されたことは、ペリグリーニの風刺画の成功によるところが大きいと言われています。

ペリグリーニはボウルズとの不仲から『ヴァニティ・フェア』を離れますが、彼の作品は高い評価を受けています。レスリー・ウォードが後任となりましたが、コレクターの間では「アープ」の作品の方が芸術性と技術面で優れていると評価されています。彼は風刺画家としての仕事以外にも、肖像画家としても活動しましたが、その成功は風刺画ほどではありませんでした。エドガー・ドガとも親交があり、互いに肖像画を描き合っています。また、ビーフステーキ・クラブの会員としてジェームズ・ホイッスラーと出会い、ホイッスラーの作品はペリグリーニに多大な影響を与えました。彼はアーツ・クラブの会員でもありました。

個性的な人物像

ペリグリーニは、非常に個性的な人物でした。彼は身だしなみに細心の注意を払い、真っ白なスパッツに磨き上げられた革靴を履き、爪を長く伸ばしていました。馬車を利用し、面白い話や珍しいものには惜しみなくお金を使いました。彼は片言の英語を話し、同性愛者であることを公言していました。これは当時としては非常に危険な行為でした。彼はディナーパーティーにマカロニ料理を持ち込んだり、慣れないベッドで寝ることを嫌ったりと、独特の習慣を持っていました。葉巻を手放すことはなく、寝るときも口にくわえていたと言われています。

晩年と死

ペリグリーニは1889年、53歳でロンドンで亡くなりました。死因は肺病でした。彼はケンサル・グリーンの聖メアリ・ローマン・カトリック墓地に埋葬されています。彼の作品は、今日でも高い評価を受けており、19世紀ロンドンの社会風刺を伝える貴重な資料となっています。彼の自由奔放な生き様と、卓越した芸術性は、今も多くの人々を魅了し続けています。

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