カルローズ

カルローズ（Calrose）

カルローズとは、アメリカ合衆国カリフォルニア州を起源とする、中粒種に分類されるジャポニカ米の品種名です。カリフォルニア州で栽培される米の総称である「カリフォルニア米」の中でも、代表的な品種の一つとして位置づけられています。

開発の経緯と歴史

カルローズは、1948年にカリフォルニア州において開発されました。この品種の開発は、同州における中粒種を中心とした米産業が発展する上で、決定的な役割を果たしました。カルローズは、Caloroという品種とCaladyという品種を交配させた後に、さらにCaladyを掛け合わせる「戻し交配」によって育成されました。この育成に使われたCaloroは、日本の早生渡船という品種から選抜された系統であり、Caladyの種子親でもあります。

アメリカ合衆国における稲作自体の歴史は、17世紀にまで遡ります。カリフォルニア州においても、19世紀に主に中国からの移民が増加し、米の需要が高まったことで稲作への関心が高まりました。しかし、当時の気候条件では稲の栽培は難しく、長らく成功には至りませんでした。転機となったのは1908年です。土壌学者のW.W. Mackieが日本から輸入した中粒種の品種を用い、サクラメント・バレーのビッグズで初めて稲の栽培に成功しました。これがきっかけとなり、1912年には商業的な米生産が開始されました。ビッグズには後にカリフォルニア米の試験場が設立され、そこで数多くの新しい品種が開発されていきました。その中の一つ、Caloroは1921年から栽培が始まった短粒種（パールライス）で、1949年までにはカリフォルニアで栽培されるイネの実に80%を占めるほど普及しました。一方、Caladyは1934年にCaloroと長粒種のLady Wrightを交配させて誕生した中粒種でした。質は優れていたものの、収量が少なかったため、広く栽培されるには至りませんでした。そして1948年、このCaloroとCaladyの特性を受け継ぎ、カルローズが世に送り出されたのです。カルローズの名前の由来は、「Cal」が開発地であるカリフォルニアを、「Rose」が品種分類である中粒種を意味することから来ています。「カリフォルニアのバラ」という意味も込められていると言われます。中粒種で「Rose」という名前を持つ品種は他にも存在し、Arkrose、Gulfrose、Northroseなどが挙げられます。また、在米日本人にも馴染み深い「国宝ローズ」も中粒種の一つです。

現在、カリフォルニア州では公的に認められているイネの品種が17種類栽培されています。同州で生産される米の約95%が短粒種または中粒種のジャポニカ米という特徴があります。これは、アメリカ合衆国全体で見ると長粒種が全体の約74%を占めているのと比較すると、非常に顕著な違いです。

特徴と幅広い用途

カルローズの持つ主要な特徴は、その食感にあります。日本で広く栽培されている短粒種のコシヒカリやあきたこまちなどがしっかりとした硬さを持つ傾向にあるのに対し、カルローズは比較的柔らかく、ふっくらとした炊き上がりになります。この食感の特性から、単にご飯として食卓に供されるだけでなく、おにぎりや寿司のシャリとしても利用されています。また、スープの具材やサラダに混ぜ込むなど、多様な料理への活用が可能です。ただし、リゾットのような粘り気が求められる料理には、アルボリオ米などがより適しているとされることもあります。

市場で「カルローズ」として販売されている商品の中には、実際には短粒種が混入している場合もあるため、購入時には注意が必要です。ちなみに、カリフォルニアで生産される短粒種は、全て日本市場向けに出荷されています。

生産・流通と日本市場

カルローズは、現在カリフォルニア州で栽培されている米全体の約80%を占める、文字通りの主力品種です。生産されたカルローズは、アメリカ国内での消費に加え、大韓民国、中華民国、香港、カナダ、スペインをはじめとする世界40カ国以上に輸出されており、国際的に知名度の高い品種と言えます。

日本市場においては、主食用として輸入される外国産米の中で、カルローズが圧倒的なシェアを誇り、その割合は約8割に達しています。日本の外食産業では、国産米の供給状況や為替レートによってカルローズが相対的に安価になる際に、コストメリットから積極的に利用される傾向が見られます。具体的な例として、牛丼チェーン大手の吉野家では、2017年から2022年までの期間、カルローズと日本産米をブレンドしたご飯を提供していました。また、ラーメンチェーンの幸楽苑ホールディングスでも、チャーハンなどにカルローズを使用している事例があります。近年、特に2025年には、日本国内で米の価格上昇と品不足が進んだことにより、本来であれば関税のかかるミニマムアクセス枠を超えてカルローズを輸入した場合でも、国産米よりも1割程度安価に販売できる状況が発生しており、今後さらに外食産業などでの利用が広がる可能性が指摘されています。

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