カレンニー民族人民解放戦線

カレンニー民族人民解放戦線（KNPLF）は、ミャンマー連邦共和国カヤー州を活動拠点とする、左派的なカレンニー民族主義を掲げる武装組織です。ビルマ語の正式名称は ကရင်နီပြည်လူမျိုးပေါင်းစုံပြည်သူ့လွတ်မြောက်ရေးတပ်ဦး、英語では Karenni Nationalities People's Liberation Front と表記され、略称としてKNPLFまたはビルマ語で ကလလတ が用いられます。

KNPLFは1978年6月26日、カレンニー軍（KA）内の左派兵士たちがタンニュン氏の指導の下で分派して結成されました。発足当初、組織は1989年に崩壊するまでビルマ共産党（CPB）から訓練や物資の支援を受けるなど、密接な関係を持っていました。同時期に活動していたカレンニー民族進歩党（KNPP）が民族独立と民主主義を主張したのに対し、KNPLFは人民民主主義と連邦制を提唱し、思想的な対立がありました。指導者はタンニュン氏の戦死後、ニャマウンメー氏を経てサンター氏が議長を務めました。1988年の民主化運動後に流入した学生を取り込みましたが、CPBの崩壊は組織にとって大きな転換点となりました。KNPLFは他の左派少数民族組織とも連携し、統一戦線を形成する試みも行いました。

1994年5月9日、KNPLFは当時の軍事政権である国家法秩序回復評議会（SLORC）と和平合意を結び、カヤー州第2特区として一定の自治権を得ました。この停戦期間中、KNPLFは経済活動に力を入れ、いわゆる「停戦資本主義」の下で林業、鉱業、インフラ、国境貿易など様々な事業を展開しました。また、社会事業として支配地域での医療提供や地雷被害者支援などにも取り組みました。停戦中も政治的な関与を続け、憲法制定プロセスへの参加や憲法への批判などを行いました。

2009年11月8日、KNPLFはミャンマー軍の管理下にある国境警備隊（BGF）への転換に同意しました。一部部隊がBGFに再編されましたが、全てが編入されたわけではなく、政治部門は独立性を保ちました。このBGF化は組織内に軋轢を生んだとも報じられています。BGF転換後、KNPLFは政党登録や全国停戦合意（NCA）への参加が認められないなど、政治的な制約を受けました。

2021年2月のクーデター発生後、KNPLFは軍事政権に対し批判的な姿勢を明確にしました。BGFという立場にありながら、国民防衛隊（PDF）をはじめとする抵抗勢力への軍事訓練や物資供給といった支援を行うようになりました。市民が参加する抵抗運動のための訓練部隊も編成しました。2021年12月のモソ村虐殺事件では、軍の攻撃により民間人と共にKNPLF/BGFの兵士も犠牲となりました。KNPLFは国民統一政府（NUG）への支持を公言するなど、抵抗勢力側との連携を深めました。

2023年6月13日、KNPLFはミャンマー軍からの離反を正式に決定し、カレンニー軍（KA）やカレンニー諸民族防衛隊（KNDF）などの抵抗勢力と共に軍事政権に対峙することを表明しました。これにより、カヤー州東部では抵抗勢力による軍拠点への攻撃が行われましたが、組織内部では分裂が生じ、副議長を含む一部部隊は軍政側に残留しました。その後もKNPLFは抵抗勢力の一員として、軍政への抵抗を続けています。

現在のKNPLFは、かつてのBGF大隊を含む複数の大隊で構成され、合計8個大隊が活動しているとされます。経済活動については、2023年の軍離反の背景の一つに、BGF化によって減少した国境貿易収入の回復を図る意図があるという憶測も存在します。社会事業としては、支配地域での医療提供や地雷被害者支援を継続しています。

歴史認識においては、カレンニー独立運動の象徴であるビートゥレの死に関する見解が、KNPPとの間で異なります。これは両組織の民族的背景による差異が影響している可能性が指摘されています。

過去、KNPLFに対しては少年兵の徴用や地雷の使用、超法規的な殺人が報告されています。経済統制を名目に村人を殺害した事例も挙げられています。また、支配地域でのアヘンケシ栽培や覚醒剤工場の存在も指摘されており、麻薬ビジネスへの関与が疑われています。

KNPLFに関連する出来事は、ドキュメンタリー映画『私の足』などの作品でも取り上げられています。

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