カワサキ・EN400

カワサキENシリーズ：ロングセラーアメリカンバイクの系譜

カワサキモーターサイクル＆エンジンカンパニーは、1980年代中盤から1990年代中盤にかけて、人気を博したアメリカンタイプのオートバイ、ENシリーズを製造・販売しました。本稿では、ENシリーズの主要モデル、その歴史、そして他機種との関係性について解説します。

ENシリーズの始まり：EN400

ENシリーズの礎を築いたのは、1985年に発売されたEN400です。空冷エンジンのZ400LTDの後継として登場したEN400は、GPZ900Rと同じ手法で水冷化された、新開発の水冷4ストロークDOHC4バルブ2気筒エンジンを搭載していました。このエンジンは、その性能から「ハーフニンジャ」の愛称で親しまれ、後に他のカワサキ車種にも搭載されることになります。EN400は、そのスタイリッシュなデザインと扱いやすいエンジンで人気を博し、シリーズの成功の基礎となりました。

多様なバリエーションと輸出モデル

EN400は、その後もマイナーチェンジを繰り返しながら、名称を変更したり、排気量を拡大したモデルが登場したりと、進化を続けました。1990年には「バルカン400」に、1994年には「EN400」と名称が変更されています。また、日本国外市場向けには排気量を拡大した輸出専用モデルも存在しました。454LTDとして始まった輸出モデルは、その後、VULCAN500、VULCAN500LTDと進化し、北米市場を中心に販売されました。これらのモデルは、ENシリーズのグローバル展開を象徴する存在と言えるでしょう。

他機種との競合とシリーズの終焉

ほぼ同時期には、DOHC4バルブ4気筒エンジンを搭載したエリミネーター400もラインナップされていました。ENシリーズはイージーライドを重視したチョッパースタイルを、エリミネーターはスポーティーなドラッグレーサーをイメージしたクルーザーとして、それぞれのモデルが異なる個性で市場にアプローチしていました。しかし、1995年にバルカン400が登場すると、カワサキのクルーザーモデルはバルカンシリーズに集約されることとなり、ENシリーズとエリミネーターシリーズは生産終了となりました。約20年にわたるENシリーズの歴史に幕が閉じました。

モデル一覧

以下に、ENシリーズの主要なモデルを一覧で示します。

400ccクラス

EN400TWIN (EN400A型): 1985年発売。初期モデル。
VULCAN400 (EN400B型): 1990年発売。マイナーチェンジによる名称変更。
EN400 (EN400C型): 1994年発売。再度のマイナーチェンジによる名称変更。

450ccクラス (輸出専用)

454LTD (EN450A型): 1985年発売。EN400の排気量拡大版。

500ccクラス (輸出専用)

VULCAN500 (EN500A型): 1990年発売。454LTDの後継機種。
VULCAN500LTD (EN500C型): 1996年発売。VULCAN500の後継機種。

まとめ

カワサキENシリーズは、水冷DOHCエンジンを搭載したアメリカンバイクとして、長きに渡り愛されたモデルです。様々なバリエーションと、輸出モデルを含めたグローバル展開は、カワサキの技術力と市場への取り組み姿勢を示しています。その歴史は、日本のモーターサイクル史において重要な一ページを刻んでいます。ENシリーズは生産終了となりましたが、その存在感は今もなお多くのバイクファンに記憶されています。

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