カワサキ・J1

カワサキ85J1：小型バイクに秘めた革新技術と圧倒的な人気

1964年、当時まだ高性能車種を持たなかった川崎航空機（現・川崎重工業）は、画期的な小型自動二輪車85J1（はちじゅうごジェイワン）を世に送り出しました。この車両は、85ccの2ストロークエンジンを搭載し、当時最新の技術であったロータリーディスクバルブ吸入方式を採用した点が大きな特徴です。

この革新的な技術は、82ccという小さな排気量ながら7.5ps/6,800rpmという高い出力を実現。他社のフルサイズ90ccエンジンにも引けを取らない性能を誇り、最高速度は90km/hに達しました。発売前に開催されたモトクロスレースでは、ブリヂストンやスズキといった強豪を相手に上位を独占するなど、その優れた性能を証明しました。

市場での反応も素晴らしく、85J1はカワサキ車として初めてバックオーダーが発生するほどの人気となりました。この成功は、ロータリーディスクバルブ技術に対するカワサキの自信を高め、更なる開発へと繋がりました。85J1をベースとした派生モデルとして、B1、C1、D1、G1といった様々な車種が誕生し、カワサキの自動二輪車ラインナップを拡大しました。

85J1のモデルバリエーション

85J1は、ユーザーのニーズに合わせた複数のモデルが展開されました。主なモデルは以下の通りです。

J1T: ツーリング用途に適したアップタイプマフラーを採用。
J1L: 分離給油ポンプを搭載し、メンテナンス性を向上。
J1TL: J1Tに分離給油ポンプを搭載したモデル。
J1TR: スクラブラースタイルを採用し、オフロード走行にも対応。リヤホイールには2つのドリブンスプロケットを装備し、状況に応じてファイナルレシオを変更可能という、当時としては画期的な機構が搭載されていました。
J1TRL: J1TRに分離給油ポンプを搭載したモデル。出力は8.2psに向上し、よりパワフルな走りを提供しました。
J1D: セルダイナモを搭載し、始動性を向上させたモデル。

85J1の開発から販売までの歴史

85J1の開発から販売までの歴史を以下に示します。

1964年10月: モーターショーに出品され、その優れた性能で注目を集めます。
1964年11月: 85J1の販売が開始されました。
1965年3月: 月産2,000台を達成するなど、高い生産性と人気を示しました。
1965年6月: J1T、J1L、J1TLの生産を開始。モデルバリエーションを拡大することで、より多くのユーザーのニーズに応えました。
* 1965年10月: モーターショーでJ1TRを発表。スクランブラーモデルの追加により、更なる市場へのアプローチを行いました。

85J1は、カワサキの技術力と市場開拓の姿勢を示す象徴的なモデルとなりました。その成功は、後のカワサキのモーターサイクル発展に大きな影響を与えたと言えるでしょう。ロータリーディスクバルブという先進技術を採用し、小型ながらもパワフルなエンジンと様々なモデルバリエーションは、当時のライダーたちに大きな魅力を与え、カワサキブランドの確立に貢献しました。85J1は、単なる一台のバイクではなく、日本のバイク業界、ひいてはカワサキの歴史において重要な役割を果たしたモデルとして記憶されています。

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