カワサキ・KR

カワサキKRシリーズ：孤高の2サイクルレーサーレプリカ

カワサキKRシリーズは、川崎重工業が製造販売したオートバイで、同社が唯一手がけた250cc2サイクルロードレーサーレプリカとして知られています。1984年に登場したKR250は、タンデムツイン・ロータリーバルブエンジンを搭載。1978年のロードレース世界選手権で優勝したKR350、KR250を彷彿とさせる設計でしたが、複雑な機構によるコスト高や、世界選手権からの撤退という状況も相まって、販売面では苦戦を強いられました。

1988年には、機構を簡素化しコストを抑えたKR-1が登場します。こちらはパラレルツインエンジンにKIPS（電子式可変排気バルブ）を搭載。しかし、翌年にはフルモデルチェンジを行い、KR-1S（およびSPモデルのKR-1R）へと進化しました。KR-1S/Rも2年で生産終了となり、後継モデルとして開発されたV型エンジンのX-09は市販されることはありませんでした。

KRシリーズ以外にも、カワサキはワークスマシンとして2サイクルスクエア4気筒のKR500を開発するなど、2サイクルエンジン技術に強みを持っていました。また、小排気量モデルとしてARシリーズ（125cc、80cc、50cc）や、海外向けモデルのKR150なども存在しました。日本ではフルカウル2サイクルスポーツモデルの後継車種は登場しませんでしたが、KR150をルーツとする150ccモデルは、インドネシア向けニンジャ150RR（2012～2015年）まで製造が継続されました。

KRシリーズは、高水準のスペックとクラス最軽量の車体を持ちながら、販売期間が短かったため、販売台数はライバル車種（スズキRG250Γ、RGV250Γ、ホンダNS250R/F、NSR250R、ヤマハTZR250など）と比較して非常に少ないと推測されます。そのため、中古車市場では希少価値が高く、2000年以降の2サイクル規制の影響もあって、高価格で取引されています。

漫画『ドラゴンボール』との意外な関係

興味深いことに、KRシリーズは漫画家・鳥山明氏の愛車でした。そのため、鳥山氏の代表作『ドラゴンボール』において、ブルマの初期愛車としてKR-1が登場し、単行本の扉絵にも描かれています。この事実は、KRシリーズの知名度向上に貢献したと言えるでしょう。

KR-1のスペック詳細

ここでは、KR-1の主要なスペックについて詳しく見ていきます。

形式: KR250B
エンジン形式: 水冷2サイクルクランクケースリードバルブ
排気量: 249cc
最高出力: 60ps以上（諸元表に記載なし、チューニング次第では68psに到達）
電子式可変排気バルブ（KIPS）: 搭載
ラジエター液容量: 1500cc
エンジンオイル容量: 1200cc
ミッションオイル: SEグレード 10W30/10W40 850ml
タイヤサイズ: 前 100/70-17、後 130/60-18
キャブレター: KEIHIN PWK28Φ
ブレーキ: 前後ディスクブレーキ
サスペンション: 正立フォーク（インナー径41mm）、リアショック

さらに、F3キットやSPキットといったチューニングパーツも用意されており、高いカスタマイズ性も特徴でした。ブレーキキャリパーは他車種からの流用も可能で、ユーザーによるメンテナンスや改造も容易でした。

KR-1S/Rのスペック詳細と変更点

KR-1S/R（KR250C）は、KR-1をベースにほぼ全面的に改良されたモデルです。外装は似ていますが、内部構造は大きく変更されています。

エンジン: シリンダー、排気バルブの仕様変更、キャブレターセッティング変更
フレーム: リブの無い平面状のメインフレームに変更
サスペンション: フロントフォーク、リアショック、スイングアームの変更。フロントキャリパーは対向4ポットに変更。
ホイール: 3本スポークから5本スポークへ変更
マフラー: 黒い鉄製マフラーからアルミ製に変更
ミッション: クロスレシオギアミッションに変更
* その他: CDI、チャンバーなどの変更

KR-1S/Rでは、よりレーシーな走りを追求した改良が施されました。ホイールやブレーキディスクはZXR250と共通部品も多く、メンテナンスの容易さも向上していました。キャブレターはKR-1と異なる専用品が使用されており、2ストローク車専用の特性を持っていました。

KRシリーズは、その短命な販売期間にもかかわらず、多くのファンを魅了した個性的なオートバイです。その希少性と高いパフォーマンスは、現在でも多くの愛好家から高く評価されています。

もう一度検索