カワサキ・KSR

カワサキKSRシリーズ：ミニバイク黄金時代の足跡

カワサキ重工業が製造販売していたオートバイ、KSRシリーズ。その人気と歴史、そして2ストロークエンジンの終焉までを紐解きます。本記事では、KSシリーズの原点であるKSと、その系譜を受け継ぐKSR-I、KSR-II、KSR110の4モデルについて、詳細に解説します。

KS-I/II：ミニバイクブームの序章

1987年に登場したKS-IとKS-IIは、50ccと80ccエンジンを搭載したミニバイクでした。ARシリーズのエンジンを流用し、前後10インチタイヤを装備。小柄な車体ながら、オンロード走行を重視した設計が特徴です。当時、モタードというジャンルはまだ存在しませんでしたが、その走りやスタイルは、後のモタードブームの先駆けと言えるでしょう。特にKS-IIは最高速度約90km/hを誇り、その俊足ぶりは高く評価されました。しかし、ヤマハTDRの人気の高さが影を落とし、販売期間は約3年と短命に終わります。現在では非常に稀少なモデルとなっています。

KSR-I：12インチタイヤと水冷エンジン

1990年、KSシリーズのフルモデルチェンジとしてKSR-Iが登場します。ライバルであるヤマハTDRに対抗するため、足回りを大幅に強化。前後12インチタイヤとディスクブレーキ、そしてこのクラスでは珍しい倒立フロントフォークを採用しました。エンジンも空冷から水冷へと進化を遂げ、総合的な性能の大幅な向上を実現しました。その高い完成度から高い評価を受け、10年以上に渡って販売されたロングセラーモデルとなりました。しかし、環境規制強化による2ストロークエンジンの製造困難化により、販売終了を余儀なくされました。現在では、カワサキの国内販売における最後の50ccオートバイ（原動機付自転車）として、その歴史的意義も大きくなっています。

KSR-II：ミニモタードの先駆者

KSR-Iと同時に1990年に発売されたKSR-II。基本的な車体はKSR-Iと共通ですが、排気量は79ccに拡大、一人乗り専用車として設計されました。当初は人気が低迷しましたが、KSR-Iの販売終了後も継続販売されたことで、その高い性能とミニモタードスタイルが再評価されることとなります。軽量な車体とパワフルな2ストロークエンジンは、ジムカーナ競技で高いポテンシャルを発揮し、上位入賞を果たすこともありました。しかし、KSR-I同様、排出ガス規制の強化により2001年に販売終了。カワサキは国内メーカーで初めて、市販車の2ストロークエンジンを全廃することとなりました。

KSR110：4ストロークエンジンへの移行

KSR-IIの後継として2003年に登場したKSR110は、タイで生産された車両を日本に輸入・販売するモデルでした。車体はKSR-IIをほぼ踏襲しつつ、エンジンはKLX110用の空冷4ストロークエンジンを搭載。遠心クラッチ式のため、クラッチレバーが不要となり、AT限定免許でも運転可能となりました。性能面ではKSR-IIを下回りましたが、遠心クラッチをマニュアルに変更するキットも登場するなど、独自の進化を遂げました。2008年の排出ガス規制強化により、日本仕様は2009年に販売終了。しかし、タイでの生産は継続され、並行輸入などで日本市場にも多く流通しました。2014年には、マニュアルトランスミッションを搭載したKSR PROも登場しています。KSR110は、時代の変化に対応したカワサキの柔軟な姿勢を示すモデルと言えます。

KSRシリーズの系譜とZ125

KSRシリーズは、時代の流れと共に進化と終焉を繰り返しました。2ストロークエンジンの魅力と、環境規制という壁との戦い。その歴史は、オートバイの歴史において貴重な一ページを刻んでいます。KSR110の後継車として2015年に登場したZ125は、KSRシリーズの系譜を受け継ぎながらも、新たな時代の要求に応えるモデルとして現在も販売されています。KSRシリーズの技術とスピリットは、Z125へと受け継がれ、新たな伝説を紡いでいると言えるでしょう。

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