カワサキ・Z1

カワサキZ1：伝説の空冷4気筒エンジンの歴史

カワサキZ1は、1972年に川崎重工業が北米と欧州市場向けに発売したオートバイです。正式名称はカワサキ・900 Super4ですが、型式名であるZ1で広く知られています。本稿では、Z1とその後継機種であるZ900/KZ900について、開発から人気を博した理由までを詳しく解説します。

開発の背景：北米市場と4気筒エンジンの必要性

1960年代後半、カワサキの主要市場であった北米では、燃費の悪さが問題視されていた2ストロークエンジンよりも、4ストロークエンジンの人気が高まっていました。当時、2ストロークエンジンを主力としていたカワサキは、この市場の変化に対応できず、業績が悪化していました。

カワサキは、大型オートバイといえば2ストローク500ccのマッハシリーズしか持っておらず、4ストローク大型バイクの開発が急務でした。既存の650cc並列2気筒OHVのW1シリーズはスポーツ走行には不向きだったため、新たなエンジンの開発に着手します。

当初は空冷並列4気筒のN600型エンジンの開発を進めていましたが、1969年にホンダがCB750FOURを発表。ホンダに先を越されたカワサキは、N600の開発を中止し、方針転換を図ります。

北米市場を強く意識しながらも、ホンダとの差別化を図るため、排気量を900ccに拡大した空冷並列4気筒[DOHC]]エンジン]を搭載する[[オートバイの開発を開始しました。このプロジェクトは「ニューヨークステーキ作戦」と名付けられ、多気筒エンジンを「ステーキ」と呼んだ北米市場への挑戦として、開発が進められました。

Z1の設計と特徴：後発の利を生かした革新

Z1は、後発の利を生かし、DOHCエンジンの採用に加え、足付き性の向上にも配慮した設計となっています。メディア戦略も功を奏し、発売後は高い人気を博しました。これにより、カワサキは「高性能・大型車」メーカーとしての地位を確立することになります。

カワサキは、オートバイを「ZAPPER」と「TOURING CYCLE」の2種類に分類していました。Z1は「ZAPPER」に分類され、「風切音」を意味する「ZAP」から派生した名称です。軽量で加速性に優れ、信号間の短い競争「シグナルグランプリ」に強いことが特徴でした。これは、当時の北米市場のニーズに合致したものでした。一方、「TOURING CYCLE」は長距離走行に適したモデルで、後のLTDシリーズに繋がります。

モデルチェンジとZ1の遺産：Z900、Z1000そしてその後の系譜

1976年にはZ900にマイナーチェンジ、1977年にはZ1000へとモデルチェンジされました。Z900は、カワサキの二輪車で初めて「z」を車名に使用したモデルです。Z1000はマフラーを2本出しに変更するなど、エンジンフィーリングもマイルドになりました。しかし、4本出しマフラーの旧モデルZ1は、中古市場で人気が高まり、価格が暴騰するほどでした。

Z1は、900Super4(Z1、Z1A、Z1B)とモデルチェンジを重ね、カラーリングやエンジン、装備などが変更されていきました。それぞれのモデルには、オイル漏れ対策やブレーキシステムの改良、チェーン給油装置の廃止など、様々な改良が施されました。

Z1は、カワサキのオートバイ史における重要なモデルであり、後継機種であるZ900、Z1000シリーズにもその遺伝子が受け継がれています。その高い性能と個性的なデザインは、現在でも多くのファンを魅了し続けています。Z1の登場は、カワサキだけでなく、日本のオートバイ業界全体に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

参考文献

* 種子島経『Z1開発物語 New York steak story モーターサイクルサムアメリカを行く』ライダースクラブ、1990年8月、ISBN 4-87099-038-5

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