カワサキ・Z1300

カワサキZ1300：日本が誇る大型バイクの伝説

1978年、カワサキはドイツ・ケルンショーで、当時としては圧倒的な排気量を誇る新型オートバイ、Z1300（北米名KZ1300）を発表しました。このモデルは、同時期に発表されたホンダCBX1000と同様に直列6気筒エンジンを搭載したモデルでしたが、空冷DOHC4バルブ1047ccのCBXとは異なり、Z1300は水冷DOHC2バルブ1286ccという、日本メーカー製オートバイとしては当時最大の排気量を誇るエンジンを搭載していました。さらに、ツアラーとしての性格を強く打ち出すシャフトドライブを採用していた点も大きな特徴でした。

1286ccという排気量は、ホンダCBX1000の開発状況を把握した上で、当初計画の1200ccから拡大されたという説や、当時のハーレーダビッドソンを意識したという説など、様々な憶測が飛び交っていました。また、Z1300の発表は、ドイツにおけるオートバイの100馬力規制発表という出来事とも結びついています。ドイツ仕様は1982年モデル（A4）から99PSにパワーダウンされましたが、これはこの規制への対応だったと考えられます。

北米仕様のKZ1300は、フューエルタンク容量が欧州仕様の27リットルに対し21リットルと異なっていましたが、1983年モデル（A5）からは27リットルに統一されました。また、キャブレターは2バレル3連装という、オートバイとしては珍しい構成を採用していました。Z1300は1979年（A1）から1983年（A5）にかけてマイナーチェンジを繰り返しながら生産され、1984年にはインジェクション化され、ZG1300としてヨーロッパ市場にのみ販売されました。インジェクション化によって、馬力は130PSに向上し、A4から99PSにパワーダウンしていたドイツ仕様も110PSに向上しています。

Z1300シリーズには標準モデルのA型とツアラーモデルのB型が存在し、KZ1300Bツーリングはその後、専用フレームとインジェクションを搭載したZN1300Voyagerへとモデルチェンジしました。

Z1300開発の背景には、カワサキが北米市場におけるクルーザー需要を捉えようとした戦略がありました。この戦略は見事に成功し、Z1300は世界中で高い評価を受け、10年以上にわたるロングセラーモデルとなりました。

Z1300の開発思想と装備

カワサキはZ1300を最高のフラッグシップマシンとして位置づけ、エンジン、フレーム、外装（タンク、シート、テールカウル、サイドカバーなど）、メーター、ウィンカー、ヘッドライト、テールランプ、バックミラー、ハンドルスイッチボックスに至るまで、専用設計のパーツを投入しました。ただし、消耗品に関しては、当時のZ1やZ1000と共通のものが多く使用されていました。

Z1300の装備は、1980年代後半には標準化されつつありましたが、1978年の発売当時としては非常に充実していました。主な装備としては以下のものが挙げられます。

前後キャストホイール
チューブレスタイヤ
フロントダブルディスクブレーキ、リアシングルディスクブレーキ（ディスクローターは穴あきタイプ）
セミエア式フロントフォーク
調整付きリアショック（A3以降はセミエア式）
ハロゲンヘッドライト
オートウィンカーキャンセラー
左右別ウィンカーインジケーター
フロントウィンカーポジションランプ（北米仕様のみ）
ハザードスイッチ（北米仕様のみ）
電気式フューエルメーター
ガバナ進角式フルトランジスター点火（A3以降は電子進角式）
二連装ホーン
電磁式燃料コック
大型バッテリー
シートロック兼用サブイグニッションキー
エアークリーナーボックスサイドカバー
外装同色フロントフェンダー

エンジンオイル量はマイナーチェンジごとに増加し（A1：4.6リットル、A2後期：5.3リットル、A3～A5：6.2リットル）、これは熱問題が原因の一つと考えられていましたが、ZG1300A1からのクランクケースの大幅な変更により、以降はオイル量の増加は見られなくなりました。（ZG1300A1～：5.9リットル）

初期型A1には、フロントフォークアクスルシャフトのボルトが左右2本（A2以降は1本）、NGK B8ES点火プラグ（A2以降はBP6ES）、独自のシフトチェンジペダル形状、キャブレタージェットニードルの5段くぼみ（A2以降なし）、各エキパイの燃調ボルト（A2以降なし）、北米仕様の160マイルスケール速度計（A2以降は85マイル）といった特徴がありました。

Z1300は、その圧倒的な排気量と充実した装備、そしてカワサキの技術力の結晶として、オートバイの歴史に大きな足跡を残したモデルと言えるでしょう。このマシンは、単なる乗り物ではなく、時代を彩った伝説的な存在として、多くのライダーの記憶に刻み込まれています。

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