カワサキ・ZZR1200

カワサキZZR1200：進化と課題を背負ったスポーツツアラー

カワサキZZR1200は、2002年から2005年にかけて製造販売された、カワサキのZZRシリーズに属する大型オートバイです。スーパースポーツ色の強いZX-12Rとは対照的に、ZZR1100を受け継ぎつつ、スポーツツアラーとしての性格をより明確に打ち出したモデルとして登場しました。

開発背景と市場での評価

当時、カワサキのフラッグシップモデルはZX-12Rでしたが、その性能はスーパースポーツ寄りに特化しており、長距離走行やツーリングでの快適性を求めるライダーのニーズには必ずしも合致していませんでした。そのため、ZZR1100の後継車種として、より快適で実用的なスポーツツアラーを求める声が市場に多く存在していました。ZZR1200はこのニーズに応えるべく開発され、ZX-12Rとは異なる、よりツアラー寄りの設計がなされました。

ZZR1100の弱点であった部分が改善されているなど、進化した点も見受けられます。しかし、技術面では目新しい要素が少なく、保守的な設計であったことも事実です。デザインに関しても、前衛的で個性的なスタイルは、多くのライダーに受け入れられたとは言えず、賛否両論を呼びました。加えて、「最速」というイメージを持たなかったことや、メーカー最上位機種ではなくなったことも、ZZR1100ユーザーからの支持獲得を阻む要因となったと考えられます。結果として、販売台数は期待を下回る結果となりました。2006年には後継車種であるZZR1400が発売され、ZZR1200はZX-12Rと共に生産終了となりました。

車両解説：ツアラー性能を追求した改良点

ZZR1200のエンジンは、ZRX1200をベースに高出力化されたものでした。具体的には、鋳鉄スリーブを廃止しメッキシリンダーを採用、ボア・ストロークの拡大によって排気量を増加させるなど、性能向上のための改良が施されました。当時、多くの新型車両がインジェクションを採用する中、ZZR1200はキャブレターを採用しており、カワサキの大型バイクとしては最後のキャブレターモデルとなりました。マフラーは、ステンレス製の左右2本出しと、スポーティな外観を演出しています。

フレームはZZR1100のアルミツインスパー構造を踏襲しつつ、シートレールは鋼管製に変更され、積載性を高める設計がなされています。ツーリングでの快適性を重視し、リヤサスペンションにはリモート式のプリロードアジャスターが装備され、二人乗りや荷物積載時の調整が容易になっています。フロントフォークは正立カートリッジ式で、C3型からは減衰調整機能が追加されました。ブレーキシステムは、ニッシン製異径4ポッドキャリパーを採用し、車重に見合った制動力を確保しています。

ヘッドライトは2灯同時点灯式のリフレクタータイプで、ZZR1100と比較して照射範囲が大幅に改善され、夜間の走行安全性も向上しています。

モデルバリエーション

ZZR1200は、製造期間中にいくつかのモデルバリエーションが存在します。年式によって、カラーリングやフロントフォークの仕様（C3型以降は減衰調整機能追加、ステアリングステムの大径化に伴うアフターパーツの互換性問題）、さらには地域仕様も存在しています。（ZX1200-C1、ZX1200-C2、ZX1200-C3、ZX1200-C4）それぞれの仕様の違いは、細かな変更点にも及んでいます。

まとめ

カワサキZZR1200は、ZZR1100の後継としてスポーツツアラーの性能向上を目指したモデルでしたが、保守的な技術やデザインの賛否両論、販売台数の低迷など、様々な課題を抱えていました。しかし、その個性的なデザインや、ZZRシリーズの歴史における位置づけは、多くのライダーの記憶に刻まれていると言えるでしょう。技術面における保守性とデザインの独自性は、後継モデルであるZZR1400へと繋がる進化の過程を示す、重要なモデルとして位置づけられています。

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