カンサス・シティ (曲)

カンサス・シティ：ロック史に残る名曲の軌跡

1952年、ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーという、当時ロサンゼルスに住む若きR＆B愛好家によって「カンサス・シティ」は誕生しました。彼らはカンザスシティを訪れたことはありませんでしたが、ビッグ・ジョー・ターナーのレコードからインスピレーションを得てこの曲を創作しました。

当初は、伝統的なブルースを好むリーバーと、斬新なボーカルラインを追求するストーラーの間で、曲のメロディーをめぐって意見の相違がありましたが、最終的にはストーラーのアイデアが採用されました。アレンジはマックスウェル・デイヴィスが担当し、テナーサックスも演奏しています。こうして完成した楽曲は、西海岸のR＆B歌手、リトル・ウィリー・リトルフィールドによってレコーディングされ、同年フィデラル・レコードからシングル「K.C.ラヴィング」としてリリースされましたが、チャート入りは果たしませんでした。

しかし、「カンサス・シティ」の運命は、1950年代後半に大きく変わります。リトル・リチャードが1955年に2つのバージョンを録音。1つは原曲に忠実なアレンジ、もう1つは「Hey, hey, hey, hey」のリフレインが印象的な、大幅にアレンジされたバージョンでした。後者のバージョンはアルバム『ザ・ファビュラス・リトル・リチャード』に収録され、シングルカットされると全英チャートで26位を記録するヒットとなりました。リトル・リチャードは、このアレンジの一部を基に「ヘイ・ヘイ・ヘイ・ヘイ」という楽曲も発表し、こちらも人気を博しました。

そして1959年、リトルフィールドの演奏を長年ライブで披露していたウィルバート・ハリスンが、この曲に新たな命を吹き込みます。フューリーのボビー・ロビンソンをプロデューサーに迎え、ギタリストのワイルド・ジミー・スプルーイルと共にレコーディングされたハリスンのバージョンは、リトルフィールドの演奏をベースにしながらも、スプルーイルのギターソロが光るシャッフルグルーヴが特徴でした。歌詞の一部も変更され、タイトルは「カンサス・シティ」に戻されました。

このハリスン版「カンサス・シティ」こそが、大成功を収めます。Billboard Hot 100とHot R＆B / Hip-Hop Songsチャートで7週連続1位を獲得し、1959年最大のヒット曲の1つとなりました。アメリカにおけるSP盤としては最後のヒット曲となりました。この成功を受け、翌年にはハリスンはアンサーソング「Goodbye Kansas City」を発表しています。

「カンサス・シティ」はその後も、多くのアーティストにカバーされ続けました。中でも有名なのがビートルズのバージョンです。彼らは1961年からライブで演奏しており、1964年にリトル・リチャードのバージョンを参考にレコーディング。ポール・マッカートニーのリードボーカル、そしてジョージ・ハリスンのギターソロが光るこのバージョンは、アルバム『ビートルズ・フォー・セール』に収録され、ビートルズ最高のカバーの1つと評価されています。レコーディングにはジョージ・マーティンがピアノで参加していますが、その音はほとんど聴こえないほど控えめなものとなっています。また、ジェームズ・ブラウンも1967年にカバーし、R＆Bチャートで21位、Hot 100で55位を記録しました。

ウィルバート・ハリスン版「カンサス・シティ」は2001年、グラミーの殿堂入りを果たし、ロックの殿堂の「500 Songs That Shaped Rock」にも選出されています。2005年にはカンザスシティ市が、この曲を公式ソングに採用しました。

このように、「カンサス・シティ」は、複数のアーティストによってカバーされ、チャートを席巻し、ロック史に大きな足跡を残した、まさに名曲と言えるでしょう。そのシンプルながらもキャッチーなメロディー、そして時代を超えて愛され続ける普遍的な魅力は、多くの音楽ファンを魅了し続けています。

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