カンヌ映画祭殺人事件

カンヌ映画祭殺人事件

1994年にフランスで公開された長編喜劇映画。原題はフランス語で『La Cité de la peur』。監督はアラン・ベルベリアンが務め、脚本と主演はシャンタル・ロビーとアラン・シャバが担当した。

あらすじ

物語の中心となるのは、映画宣伝を生業とするオディール・ドレという女性である。彼女は、自身が手がける映画『アカは滅びる』を、世界屈指の映画の祭典であるカンヌ国際映画祭で成功させるため、その宣伝活動に情熱を注いでいた。

事態が急変するのは、最初の奇妙な事件が発生してからである。パリで、担当作品である『アカは滅びる』の映写技師が殺害されたのだ。驚くべき点は、その殺害方法が、皮肉にも映画の中で描かれる場面と酷似していたことだ。通常であれば致命的なトラブルだが、オディールはこの不気味な一致を逆手にとり、自身の映画の宣伝材料として利用しようという大胆かつ不謹慎な発想に至る。彼女はすぐさま、事件を映画のプロモーションに結びつける計画を立て始める。

しかし、状況はさらに悪化する。映画の監督は精神的な問題を抱え入院し、プロデューサーも逮捕されて刑務所送りとなる。主要な関係者を失い、オディールは窮地に立たされる。それでもカンヌでの上映を諦められない彼女は、新たな手段に出る。主演を務める俳優シモン・ジェレミ、そして『ミスター下半身』という異名を持つ映画業界人セルジュ・カラマーゾフを伴い、カンヌ映画祭へと向かうことを決める。

カンヌに到着し、華やかな映画祭が幕を開ける。だが、悪夢は繰り返された。カンヌの会場でも、彼女が担当する『アカは滅びる』に関連する映写技師が、再び映画の描写を模倣したかのような手口で殺害される連続殺人事件が発生したのだ。この異常事態は、映画祭全体をたちまちパニックと混乱に陥れる。

地元警察は事態収拾のため、ベテラン警視のビアレスを捜査責任者とする。ビアレス警視は冷静に事件の捜査を開始する。一方、この連続殺人は、図らずもマスコミのセンセーショナルな注目を集める結果となった。特に、殺害手口が特定の映画と関連しているという点がメディアの関心を惹きつけ、『アカは滅びる』という作品名は連日のように報道されることになる。皮肉にも、事件の報道を通して映画に対する世間の関心は異常に高まり、結果として世界各国の映画会社や配給業者から、作品の配給に関する問い合わせやオファーが殺到するという、予想外の展開を迎える。

映画祭の最終日、犯人は最後の凶行を計画する。しかし、既に捜査は最終段階に入っており、ビアレス警視らは犯人を追い詰めていた。緊迫した状況の末、犯人の正体が明らかになり、逮捕に至る。こうして連続殺人事件は解決する。オディールの強引な宣伝活動は、図らずも最悪の方法ではあるが、大きな成功を収めることとなったのである。

本作は、映画業界における宣伝の狂騒や、人間の欲望が生み出す奇妙な行動を、連続殺人という刺激的な要素と絡めて、ブラックユーモアを交えながら描き出したコメディ作品である。

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