カンパーニャ・ロマーナ

カンパーニャ・ロマーナは、イタリア中部に位置する、ローマを取り囲むように広がる平野と丘陵地帯を指します。北側はトルファ山地とサバティーニ山地に、南東側はアルバーノ丘陵（アルバーノ湖を含む火山地形）に囲まれ、南西部はティレニア海に面しています。この地域には、テヴェレ川とアニエーネ川が流れ、豊かな自然を育んでいます。

古代から中世にかけての変遷

古代ローマ時代、カンパーニャ・ロマーナは肥沃な土地として栄え、重要な農業地帯でした。多くの人々がこの地に居住し、農業を営んでいましたが、中世になるとマラリアが蔓延し、農業用水の不足も重なって、農地としての機能は著しく低下しました。これにより、かつての繁栄は失われ、荒廃が進みました。

近世の再評価とグランド・ツアー

18世紀から19世紀にかけて、カンパーニャ・ロマーナの牧歌的な風景は、ローマで活動した画家たちの心を捉え、数多くの風景画が描かれました。これらの絵画はヨーロッパの上流階級の人々に広く知られるようになり、彼らはグランド・ツアーの一環としてカンパーニャ・ロマーナを訪れるようになりました。この時期には、芸術的な価値が再認識され、観光地としても注目を集めました。

近代における変貌

19世紀から20世紀にかけて、カンパーニャ・ロマーナは再び農地としての利用が試みられました。湿地は埋め立てられ、新しい集落が建設されました。しかし、1950年代以降、ローマ市街地の拡大に伴い、自然の風景は急速に失われ、一部の緑地を除いて、その面影はほとんど残っていません。

現在のカンパーニャ・ロマーナ

カンパーニャ・ロマーナは、かつての牧歌的な風景の多くが失われたものの、その歴史と文化は今もなお息づいています。古代ローマ時代の遺跡や、中世の建造物、近世の芸術作品など、様々な時代の遺産が点在しており、歴史を辿る旅を楽しむことができます。また、周辺地域には自然公園も整備されており、自然を身近に感じることができます。

カンパーニャ・ロマーナは、長い歴史の中で様々な変遷を遂げてきました。古代の繁栄、中世の荒廃、近世の再評価、そして近代の都市化。これらの歴史を胸に刻み、この地を訪れることで、イタリアの歴史と文化をより深く理解することができるでしょう。

参考文献

* Carocci, Sandro; Vendittelli, Marco (2004). L'origine della Campagna Romana. Casali, castelli e villaggi nel XII e XIII secolo. Rome: Società Romana di Storia Patria.

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