カンラン

カンランについて

カンラン（寒蘭、学名：Cymbidium kanran）は、単子葉植物に属するラン科の一種で、日本の本州南部の森林に自生しています。この植物は東洋ランとして非常に人気があり、現在ではほとんど野生の個体を見ることができません。

特徴

カンランは地面に根を広げて生育する地生蘭であり、日本産のランの中でも大きなサイズを誇るもののひとつです。完全に成長した株は、草丈が約1メートルに達することもあります。特徴的な部分として、茎は球形の偽球茎で構成されており、匍匐茎を持たず、株立ちの形態を取ります。また、葉は細長く、やや硬い質感で上向きに伸びており、先端は横を向くことが特徴的です。葉は深緑色で光沢があり、その表面と縁は滑らかです。根も太くて長いのが特長です。これに対し、春蘭とは葉先のギザギザの有無や、葉を透かしたときに見える濃い筋の有無で見分けることができます。

カンランの花は10月から1月頃にかけて咲き、寒の時期に花が開くことからその名が付けられています。花茎は偽球茎の基部から伸び、細く硬い茎の上に、数輪から十数輪の花を付けます。花弁は細長く、先が尖っており、外の三弁は大きく外向きに張る一方、内の二弁は小振りです。花の色彩は多様で、一般的には緑色に赤い筋やぼかしが入りますが、赤や黄色の花も確認されています。唇弁は小さく、白や黄色がかっており、通常は赤い小さな斑点があります。

分布

カンランは、本州の紀伊半島から南の四国、九州、琉球列島にかけて分布しています。北限には静岡県の大井川上流や伊豆半島の天城山があり、過去には自生を見かけることもありましたが、乱獲の影響で現在では非常に少数派です。また、カンランは山草ブーム以前から採集の対象になっており、その分布が狭く、個体数が少ないこと、栽培が難しいため、特に人気の高い品種は高値で取引されました。採集者は優れた品種が生育する場所に関する情報を共有し、徹底的に採集が行われました。昭和30〜40年代には、探し方が変わり、数センチの葉を持つ株を探すスタイルが一般的になり、昭和の終わりには地面に這いつくばって葉先を探すようになっていました。さらには、特定の場所を決めて土を掘り起こし地下茎を探す手法も見られました。

現在では、日本国内で花が咲いているカンランの株を見つけることは非常に困難です。しかし、高知県や熊本県での開花情報もあり、何とか絶滅を免れている状況にあります。カンランは発芽後、共生菌と共に地下で過ごす期間が長いため発見が難しいという特性も影響しています。一方、環境改善によって再生した新しい生息地もわずかに存在しています。

人工増殖

現在では野生からの供給が難しくなっているため、新しい品種を得るために種子からの人工繁殖が模索されています。この植物は発芽初期に共生菌から養分を得て寄生を行うため、鉢での発芽には成功例は少ないですが、人工交配で得た種子をそのまま自生地に播く「山播き」により、実生苗の取得が経験的に知られています。しかし、異なる品種の種子を播くことで分布域が乱されることが懸念されていますが、実生苗が採取されてしまうため、野生化するリスクは少ないのが現状です。近年では、人工交配の結果得られた苗の開花も増えており、業界からも注目されています。

保全状況

カンランは絶滅危惧IB類（EN）に分類されており、2007年にはIA類に指定されていましたが、2012年にIB類に格下げされました。このように、絶滅の危機にさらされているため、その保全の必要性が高まっています。

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