カヴェナンター巡航戦車

巡航戦車 Mk.V カヴェナンターの概要

巡航戦車 Mk.V カヴェナンター（A13 Mk.III）は、イギリス陸軍の要望に基づき、1940年に開発された巡航戦車です。この戦車は、以前のモデルである巡航戦車 Mk.IVの改良型であり、LMS鉄道会社によって設計されました。カヴェナンターという名称は、清教徒革命時において議会派と提携したスコットランドの勢力に由来しています。この戦車は、今後のイギリス軍の巡航戦車において、「C」で始まる名前が使われる基盤を形成し、戦後も多くの戦車が同様の命名規則を持つこととなります。

設計と性能

カヴェナンターは、イギリス軍の要求に応え、可能な限り車高を下げた設計が求められました。この目的を達成するため、メドウス水平対向エンジンが搭載されましたが、設計上の制約から、エンジンは車両の後部に配置され、ラジエーターと冷却用の吸気口は車体前方に配置されるという異例のレイアウトとなりました。この設計は、その後冷却不足を引き起こす要因となり、運転中の車内温度が40度を超えることがしばしば起こりました。このため、「エンジンよりも先に乗員がオーバーヒートする」という厳しい批評を受けることになったのです。

冷却システムの課題は新型のMk.II以降も完全には解消されず、さまざまな改良が試みられましたが、根本的な問題には至りませんでした。それでも、第二次世界大戦が始まろうとする中で、イギリス軍は戦車の数を増やす必要があったため、カヴェナンターは試験も受けずに制式化され、大量生産が開始されました。結果として、1,700輌近くが生産されたものの、多くは冷却系統の問題に悩まされ、実戦に参加することはほとんどありませんでした。

バリエーション

カヴェナンターにはいくつかのバリエーションが存在しました。最も基本的なMk.Iから始まり、Mk.II、Mk.III、さらに最終的なMk.IVへと改良が進みました。その中には、オードナンス QF 3インチ榴弾砲を装備した近接支援型（CS型）も存在しました。また、観測や指揮を特化させた車両も設計されており、これらは目的に応じて異なる装備が施されました。Mk.II CS型は、砲兵部隊のために設計された観測戦車で、ダミーの砲身を装備し、車内には無線機が搭載されていました。さらに、架橋戦車や回収戦車など多様な用途に対応する車輌も開発されました。

実戦と運用

カヴェナンターは実戦においてはほとんど効果的に活用されなかったものの、オーストラリア軍によって少数がビルマ方面に投入されました。そのほとんどは国内での訓練用として使用され、実際の戦闘に参加する機会は限られていました。それでも、その設計思想や数々のバリエーションは、後に続くイギリスの戦車設計に影響を与える要素となったのです。

結論

巡航戦車Mk.Vカヴェナンターは、戦車開発における革新と同時に、設計の難しさを如実に示す存在です。数々の問題を抱えながらも、イギリスの戦車の系譜に名を刻んだこの車両は、今もなお軍事史において重要な位置を占めています。

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