カーク・ウェイラム

メンフィス生まれのサックス奏者、カーク・ウェイラムは、ジャズ、フュージョン界でその名を知られています。セッション・ミュージシャンとしても、その才能を発揮し、多岐にわたる音楽シーンで活躍しています。

生い立ちと音楽との出会い

牧師の家庭に育ったウェイラムは、幼い頃からゴスペルやR&Bに親しみ、同時にロックやポップスにも興味を持つという、多様な音楽的背景を持っていました。9歳でドラムを始めた後、高校でサックスを手にしたことが、彼の音楽家としての道を決定づけます。南テキサス大学では、テキサス・テナーのアーネット・コブに触発され、ジャズへの情熱を深めました。

プロとしてのキャリア

大学在学中にR&Bバンドを結成し、演奏活動を開始。卒業後、ヒューストンで活動していたところ、ジャズ・ピアニストのボブ・ジェームスの目に留まり、彼のグループの前座を務めることになります。その後、ジェームスのグループに正式加入し、1985年のアルバム『トゥエルヴ』に参加。同年には、タッパンジー・レコードからアルバム『Floppy Disk』でソロデビューを果たしました。このアルバムに収録された「Kyle's Smile」は、彼の息子に捧げられた心温まる一曲です。

ソロ活動と並行して、1987年からはラリー・カールトンとも共演。1980年代後半から1990年代前半にかけては、クインシー・ジョーンズ、ルーサー・ヴァンドロス、アル・ジャロウといった著名なアーティストたちと共演し、ホイットニー・ヒューストンのツアーにも参加するなど、その名声を確立していきました。ホイットニーの代表曲「オールウェイズ・ラヴ・ユー」で聴ける印象的なサックスソロは、彼の演奏によるものです。また、フュージョンバンド、ザ・リッピントンズにもゲストとして度々参加しています。

グラミー賞ノミネートとゴスペルへの回帰

1996年には、ボブ・ジェームスとの共作アルバム『ジョインド・アット・ザ・ヒップ』がグラミー賞にノミネートされ、ワーナー・ブラザース・レコードへ移籍。1997年にはアルバム『カラーズ』を発表し、1998年には自身のルーツであるゴスペルに焦点を当てた『ゴスペル・アコーディング・トゥ・ジャズ』を発表しました。このシリーズは好評を博し、2002年には第2弾『Gospel According to Jazz Chapter 2』がリリースされ、DVD盤も発売されています。

スムーズジャズブームとBWB結成

スムーズジャズのブームに乗って、2000年発表の『アンコンディショナル』がヒットし、グラミー賞に2部門でノミネート。2001年にはクリスマスアルバム『The Christmas Message』を発表。2002年には、ギタリストのノーマン・ブラウン、トランペッターのリック・ブラウンと「BWB」というグループを結成し、アルバム『グルーヴィン』をリリース。このアルバムはジャズチャートで1位を獲得し、ラジオステーションで7ヶ月間首位を独走しました。

ランデブー・エンタテインメントへの移籍と現在

ワーナー・ブラザースのジャズ部門閉鎖後、デイヴ・コーズが主宰するランデブー・エンタテインメントに移籍。2005年には、ベビーフェイスのカバー集『ベイビーフェイス・ソング・ブック』をリリースしました。2006年には、コーズらとともに「ランデヴー・オール・スターズ」として来日公演を行いました。2007年にはアルバム『ラウンドトリップ』を発表し、過去の自身の楽曲をカバー。2008年には、ピアニストの宮本貴奈との連名で『プロミセス・メイド』を発表し、全米ビルボードチャートで5位にランクインしました。2010年にはダニー・ハサウェイに捧げるカバーアルバム『Everything Is Everything』、2012年にはジョン・コルトレーンとジョニー・ハートマンに捧げる『Romance Language』を発表。

カーク・ウェイラムは、その卓越した演奏技術と、ジャンルを超えた音楽性で、これからも多くの人々を魅了し続けるでしょう。

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