カーゴ・カルト

カーゴ・カルト（Cargo Cult）

カーゴ・カルトは主にメラネシア地域で見られる特異な信仰形態であり、物質主義的な要素が色濃く表れています。この信仰では、先祖の霊や神が未来のある時点で、文明の利器を搭載した船や飛行機で訪れ、信者のもとに「カーゴ」と呼ばれる物質をもたらすと考えられています。直訳すると「積荷信仰」となるこの現象は、カーゴの到来を渇望する期待感に基づいています。

特徴と実践

カーゴ・カルトの概念は、人類学者ケネルム・バリッジの研究に基づき、いくつかの特徴を持つことが指摘されています。まず、信者たちはカーゴの到来を予言する指導者のメッセージを信じ、その信念が村の生活に深く根ざしています。多くのケースでは、こうした指導者は超自然的な信号を受け取るとされ、村人たちにカーゴの準備を命じます。また、在来の人々はカーゴを持参するのは先祖や神と考えられ、しばしばそれが白人であると信じられています。

カーゴを受け入れるため、桟橋や滑走路を設置する試みや、倉庫を建て、はりぼての船や飛行機を作ることも特徴的です。信者たちは、航空機や船舶を「誘惑」するために、ダンスや歌を踊り、時には放心することに専念することもあります。このようにして、信者たちは日常生活を忘れ、カーゴの到来を心待ちにします。

歴史的背景

カーゴ・カルトは1919年に報告された興奮状態から始まったとされ、その後も同様の現象が見られました。1923年には人類学者F・E・ウィリアムズによって「ヴァイララ狂信」として記録され、カーゴ・カルトの一例として広く知られるようになります。

カーゴ・カルトという用語は1945年に初めて使用され、その後、メラネシアの他の地域でも同様の信仰が研究されるようになりました。ピーター・ワースレイの著書『千年王国と未開社会』では、カーゴ・カルトが植民地主義への反応として位置付けられ、その後の研究が進みました。さまざまなカーゴ・カルトが単なる物質への希求だけでなく、社会的・文化的な背景にも根差していることが認識されつつあります。

ジョン・フラム信仰

バヌアツのタンナ島では、伝説的な人物ジョン・フラムへの信仰が存在し、彼を通じて豊かさをもたらそうとする動きがあります。この信仰では、外部からの干渉ではなく、地域の伝統文化の復活が求められ、アメリカ軍の影響が大きく反映されています。

批判と認識

カーゴ・カルトに対する批判も存在し、この概念が持つ歴史的・イデオロギー的背景が問題視されています。特に、ネイティブの視点を理解せず、偏った解釈がなされているとの指摘もされます。ウィリアムズの研究が植民地政府の視点から行われたことが反発を受けており、文化の多様性を無視した一面的な見解であると批判されてきました。

現代的な用法

カーゴ・カルトという言葉は、現代の商業活動やプログラミングの文脈でも用いられ、本質を理解せずに模倣を行う人々を指すことがあります。このように、カーゴ・カルトは文化人類学にとどまらず、広範な領域に影響を与える概念となっています。

まとめ

カーゴ・カルトは、メラネシアにおける独自の信仰体系を示すものであり、物質や贈与の概念が文化的戦略としてどのように展開されるかを考察する際の重要な視点を提供します。この信仰は、植民地主義や伝統文化の摩擦という文脈の中で位置づけられています。

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