カーソル (データベース)

データベースにおけるカーソル

データベースにおけるカーソルとは、一連のデータに順にアクセスする際に、検索条件と「現在位置」を保持するデータ要素です。カーソルを使用することで、大量のデータを効率的に処理し、メモリのオーバーランを防ぐことができます。

カーソルの概要

データベースには、同じ種類のデータが多数蓄積されていることが一般的です。利用者が求めるデータも1件とは限らず、複数件になる可能性があります。このような場合に、カーソルはイテレータのように機能し、データの連続的な処理を実現します。

カーソルを使ったデータアクセスの一般的な流れは以下の通りです。

1. 検索条件やソート順序を指定してカーソルを定義します。
2. パラメータが必要な場合は値を決定し、データへのアクセスを開始します。
3. カーソル位置のデータを取得します。検索結果の終端に達した場合は、処理を終了します。
4. 必要に応じてカーソル位置のデータを変更または削除します。
5. カーソルを次のデータへと進めます。
6. 3から繰り返し、すべてのデータを処理します。
7. 繰り返し処理の終了後、カーソルを解放します。

システムによっては、カーソルを次のデータに進めるだけでなく、前のデータに戻ることも可能です。

カーソルを使用する主な理由の一つは、クエリの結果が大量の行を含む場合に、メモリのオーバーランを防ぐことです。例えば、PL/pgSQLでは、forループが内部で自動的にカーソルを使用するため、メモリの問題を心配する必要はありません。

具体例

SQL

関係データベースの問い合わせ言語であるSQLでは、カーソルを用いたアクセスを実現するために、一連のステートメントが提供されています。

`DECLARE CURSOR`: カーソルを宣言します。
`FETCH`: カーソル位置のデータを取得し、カーソルを次のデータに進めます。
`UPDATE` / `DELETE`: `WHERE CURRENT OF カーソル名` を指定することで、カーソル位置のデータを変更・削除できます。
`CLOSE`: カーソルを使用後に解放します。

SQL#.E3.82.AB.E3.83.BC.E3.82.BD.E3.83.AB.E5.AE.9A.E7.BE.A9.E3.83.BB.E6.93.8D.E4.BD.9C'>[SQL]]における具体的な文法については、[SQL#カーソル定義・操作を参照してください。

ODBC

ODBCは、C言語プログラムからSQLを使ってデータベースにアクセスするためのライブラリです。ODBCはMicrosoft Windowsで広く利用され、その後、業界標準のSQL/CLIやJDBCのベースとなりました。

カーソル操作に対応するODBC関数は以下の通りです。

`SQLAllocHandle`: ステートメントハンドルを割り当てます。
`SQLExecute` / `SQLExecDirect`: SQLクエリを実行します。
`SQLFetch`: カーソルを次の行に進め、データを取得します。
`SQLCloseCursor`: カーソルを閉じます。

ODBCでは、アプリケーションプログラムがカーソルを直接指定することはほとんどありません。上記の関数は、ステートメントハンドルを引数としており、このハンドルが指し示すデータ構造の中にカーソルが含まれているという扱いになります。すなわち、ステートメントハンドルがイテレータの役割を果たします。

dbm

dbmは関係データベースよりも単純な、キーと値の対応だけからなるデータベース機能を提供します。ここでも、データベース上の「現在位置」を指し示すために「カーソル」という言葉が使われます。

注意点

カーソルは、実行中の検索条件や現在位置を保持するために、メモリ容量などのリソースを必要とします。カーソルの解放漏れは、メモリリークにつながる可能性があります。標準SQL規格では、トランザクションを終了するとカーソルは破棄されることになっていますが、DBMSによっては破棄されずにデータにアクセスできる場合があります。標準SQL規格に準拠した使い方をするのであれば、トランザクション終了後はカーソルを破棄するようにしましょう。

カーソルを適切に使用することで、大量のデータを効率的に処理し、データベースアプリケーションのパフォーマンスを向上させることができます。カーソルの概念を理解し、適切に利用することが重要です。

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