カール・グスタフ・ピロ

カール・グスタフ・ピロ：波乱の生涯を送った肖像画家

カール・グスタフ・ピロ（Carl Gustaf Pilo、1711年3月5日 - 1793年3月2日）は、スウェーデンに生まれ、デンマークで主に活躍した肖像画家です。彼はデンマーク王立美術院の校長も務め、その才能は国際的にも高く評価されました。

生い立ちと修業時代

ピロは、現在のセーデルマンランド県ニーショーピング近郊で生まれました。祖父はポーランド人で、父親はドロットニングホルム宮殿で画家として働いていました。12歳でストックホルムの画家に弟子入りし、1734年からはドイツへ修行に出ます。スウェーデン帰国後、王立美術院で肖像画家アレニウスに師事し、さらにドイツで研鑽を積みました。この間、フランスやオランダの画家の影響も受けています。1737年からはスコーネ地方で貴族の肖像画を描きながら過ごしました。

デンマークでの活躍

1741年、ピロはデンマークのコペンハーゲンに移住します。フレデリク5世や王妃ルイーセの肖像画を手がけたことから王室に重用され、以後32年間をデンマークで過ごすことになります。1745年からはデンマーク王立美術院で絵画の監督と教授を兼任し、1771年から1772年の間は校長を務めました。1759年にはアウクスブルク、1770年にはサンクトペテルブルクの美術アカデミー会員に選ばれるなど、国際的な評価も確立しました。

政治的混乱と帰国

しかし、クリスチャン7世の治世下、ドイツ出身のストルーエンセが政治の実権を握ると、ピロの立場も危うくなります。1772年の宮廷クーデターでストルーエンセが処刑されると、外国人に対する反感が高まり、ピロもその影響を受けました。国王からの無理な注文をきっかけに王室の仕事を辞職し、国外退去を命じられます。

1772年にスウェーデンへ帰国後、ピロはストックホルムに移り住み、1773年にはスウェーデン美術アカデミーの名誉会員に選ばれました。1784年にはヴァーサ勲章を受章しています。その後はスコーネとストックホルムを往復する生活を送り、晩年は故郷のニーショーピングで過ごしました。

グスタフ3世の戴冠式

晩年のピロは、グスタフ3世から戴冠式の絵の制作を依頼されます。彼は多くの人物を描く経験がなかったことや、戴冠式に参列していなかったことを理由に一度は固辞しますが、最終的には王命に従い制作に取り組みました。この作品は、ピロの代表作として知られています。

スウェーデン美術院での活動と最期

1777年、ピロはスウェーデン美術院の校長に任命され、アカデミーの仕事と戴冠式の絵の制作に晩年を費やしました。そして1793年、ストックホルムで生涯を閉じました。

ピロの作品は、写実的な描写と優れた構図が特徴であり、18世紀の肖像画を代表するものとして高く評価されています。

主な作品

フレデリク5世の肖像
ルイーセ王妃の肖像
グスタフ3世の戴冠式

外部リンク

KID Kunst Index Danmark
* Danish Biographical Encyclopedia

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