カール・バークス

カール・バークス（Carl Barks、1901年 3月27日 - 2000年 8月26日）は、ウォルト・ディズニー・カンパニーで長年にわたり活躍したアメリカ合衆国のイラストレーターであり、特に漫画分野で多大な功績を残した人物です。彼は、ドナルド・ダックが登場する物語の世界観、具体的にはアヒルたちが暮らす街「ダックバーグ」の概念を発想し、さらにその世界を彩る数多くの魅力的なキャラクターたちを生み出しました。

創造されたキャラクターたち

バークスが生んだ代表的なキャラクターには、世界一の大金持ちであるスクルージ・マクダック（1947年）、極めて幸運なドナルドの従兄弟グラッドストーン・ギャンダー（1948年）、常に金塊を狙うビーグルボーイズ（1951年）、天才的な発明家ジャイロ・ギアルース（1952年）、スクルージのライバルであるフリントハート・グロムゴールド（1956年）、ジョン・D・ロッカーダック（1961年）、そして魔女マジカ・デ・スペル（1961年）などがいます。これらのキャラクターは、その後のディズニーの漫画やアニメーション作品において、ドナルド・ダックファミリーに欠かせない存在となりました。

「The Duck Man」と称されて

彼の卓越したストーリーテリングや独特の描画スタイルから、ファンや同業者からは敬意を込めて「The Duck Man」あるいは「The Good Duck Artist」と呼ばれました。また、著名な漫画家であるウィル・アイズナーは、バークスの功績を「漫画界のハンス・クリスチャン・アンデルセン」と評し、その物語作家としての才能を讃えました。

ディズニーでのキャリア

ドイツ系移民の両親のもとに生まれたバークスは、ドナルド・ダックが短編アニメーション『かしこいメンドリ』でスクリーンデビューを果たしてから約1年後の1935年11月、ウォルト・ディズニーがアニメーターを募集する広告を目にします。これに応募したバークスは、他の訓練生と共に採用され、ロサンゼルスへと移住しました。新人時代の彼の給与は週20ドルでした。

当初の仕事は、主要なアニメーターが描いたキャラクターの重要な動きの間を埋めるカットを調整し、全体の動きをより滑らかに見せるための「インターメディエイト」と呼ばれる作業でした。しかし、バークスはこの業務と並行して、手がけるカートゥーンのストーリーラインにユーモラスなギャグのアイデアを積極的に挿入することを始めました。その才能が認められ、1937年頃からは次第にストーリーそのものの担当を任されるようになります。具体例としては、短編アニメ『ドナルドの博物館見学』の中で、理容椅子の機械がドナルドのお尻の羽を刈り取ってしまうという印象的な場面などが、彼の手によるものです。

1937年からは、ミッキーやグーフィーといった他のスターキャラクターとの共演が中心だったドナルドが、主演を務めるシリーズが本格的に制作されるようになります。これに伴い、ドナルド主演作に特化した脚本家とアニメーターの新しいチームが編成され、バークスもその一員となりました。当初は主にギャグのアイデア提供に留まっていましたが、やがて物語全体の構想を練り上げ、絵コンテ（ストーリーボード）を作成し、ウォルト・ディズニーの承認を得た上で実際の制作に取り組むという、より中心的な役割を担うようになります。この時期、彼はしばしばジャック・ハンナと共同で作業を進めることが多く、二人のコラボレーションから生まれた作品には、『ドナルドの腕白教育』、『ドナルドのダンス狂』、『ドナルドと山男』、『ドナルドの透明人間』、『食いしん坊がやってきた』、『ドナルドのプラスチック時代』といった短編アニメーションがあります。

バークスは後にアニメーション部門を離れ、漫画の世界でさらにその才能を開花させることになりますが、ディズニーアニメーション初期における彼の貢献は、ドナルド・ダックというキャラクターの個性や、その後の彼の活躍の土台を築く上で極めて重要なものでした。彼は約1世紀にわたる長い生涯を、ユーモアと冒険に満ちた物語の創造に捧げ、世界中の読者や視聴者に愛される不朽のキャラクターと世界観を残しました。

彼の生み出したダックバーグの世界とそこに住むキャラクターたちは、今日でもなお多くの人々に親しまれており、その創造性豊かな業績は、漫画史、アニメーション史において高く評価されています。

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