カール・フォン・オシエツキー

カール・フォン・オシエツキー：平和を訴えたジャーナリストの生涯

カール・フォン・オシエツキー（1889年10月3日-1938年5月4日）は、ドイツのジャーナリストであり、熱心な平和運動家でした。1935年、彼はノーベル平和賞を受賞しましたが、その功績はナチス政権による弾圧と闘い抜いた彼の生涯と深く関わっています。

ハンブルク出身のオシエツキーは、第一次世界大戦後、ドイツ平和協会の書記を務め、反戦運動に積極的に関わりました。1927年には、影響力のある雑誌『世界展望』を創刊し、そこでドイツ軍の再軍備に関する情報を公開しました。この行為は、ヴェルサイユ条約違反に当たるとして、彼を反逆罪に問うことになります。裁判の結果、彼は18ヶ月の懲役刑を宣告されましたが、無罪となったとする見解もあります。

1933年、ナチスが政権を掌握すると、オシエツキーはゲシュタポによって逮捕され、ベルリンのシュパンダウ刑務所に「保護拘置」という名目で投獄されました。その後、エスターヴェーゲン強制収容所に移送されました。

1936年、ベルリンオリンピックを前に、オシエツキーは病気のため釈放されます。そして、前年に決定していたノーベル平和賞の授賞式に出席しました。この授賞は、ナチス政権への明確な批判であり、ヒトラー政権はその後、ドイツ人によるノーベル賞受賞を禁止しました。朝日新聞の天声人語（1973年10月18日、深代惇郎氏執筆）によると、オシエツキーはゲシュタポの監視下で、授賞式において「軍備競争は狂気だ」と自身の信念を力強く表明したと伝えられています。

オシエツキーは、1938年5月4日、結核により48歳で亡くなりました。彼の死後、国際人権連盟は彼の名を冠した平和賞を創設しました。一方、ヒトラー政権は、オシエツキーの受賞への報復として、ドイツ芸術科学国家賞を創設したとされています。さらに、ノルウェー侵攻後には、ノルウェー・ノーベル委員会の委員全員を逮捕したという記録もあります。

オシエツキーのように、投獄中や軟禁状態にある中でノーベル平和賞を受賞した人物は、他に1991年のアウンサンスーチー、2010年の劉暁波、そして2022年のアレシ・ビャリャツキがいます。彼らと同様に、オシエツキーの受賞は、平和と人権に対する揺るぎない信念と、権力に対する抵抗の象徴として、世界に大きな影響を与え続けました。彼の生涯は、ジャーナリストとしての倫理、そして平和への揺るぎない献身の物語として、後世に語り継がれるべきでしょう。

オシエツキーの活動は、単なる反戦運動にとどまりませんでした。彼は、ジャーナリストとして真実を追求し、権力による弾圧に屈することなく、自身の信念を貫き通しました。彼の勇気と献身は、私たちに、自由と平和を守るために、常に声を上げ、行動し続けることの重要性を改めて教えてくれます。

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