カーンアーク

カーンアーク（Kern arc）は、大気光学現象の一つで、天頂を中心とした円弧状の光の現象として現れます。この珍しい現象の名前は、1895年に初めてこの現象を観測し報告したオランダのH. F. Kernにちなんで名付けられました。

カーンアークは、環天頂アークと発生位置が近く、しばしば同時に出現します。興味深いことに、カーンアークとその環天頂アークは一部が完全に一致することがあります。しかし、カーンアークは光の強度が弱く、非常に淡くしか見えないため、観測が難しいとされています。

この現象の原因として考えられているのは、特殊な形状の六角形氷晶です。通常の正六角形ではなく、三角形の角が削られたような形をした氷晶が、カーンアークの生成に関与していると考えられています。太陽光がこれらの氷晶の六角形の面から入射し、屈折した後、四角形の面で一度反射し、別の四角形の面で屈折して出射することで、この現象が起こると推定されています。また、環天頂アークと同様に、太陽高度が50度以下でなければ出現しないと考えられています。

カーンアークは非常に稀な現象であり、観測例は極めて少ないです。これまでに報告されたのはわずか6例とされており、写真による記録は長らくありませんでした。しかし、2007年11月17日にフィンランドのソトカモで、Marko Mikkiläによって世界で初めて写真撮影に成功しました。この時、スキー場ではスノーガンによって人工雪が降らされており、その氷の結晶に太陽光が当たることでカーンアークが現れました。撮影時の気温は-15～-18度でした。

カーンアークの観測例が少ないこと、また、出現条件が限られていることから、その詳しいメカニズムの解明はまだ進んでいません。今後の観測と研究によって、この珍しい大気光学現象の理解が深まることが期待されます。

参考資料：
Kern arc - Atmospheric optics
Mikkilä, Marko (2008年1月27日). “Kern arc photographed in Finland”. Halo Reports (blog). URSA.
* Kern Arc - MikkiMake, Flickr - カーンアークの写真（色反転処理により視認性を向上）

もう一度検索