ガガブタ

ガガブタ（Nymphoides indica）

ガガブタは、ミツガシワ科に属するアサザ属の多年草であり、湖やため池などの止水域で生育する水草です。この植物は、温暖な水域に生息し、アジア、アメリカ、アフリカ、オーストラリアといった地域に広がっています。特に日本では、本州から九州にかけて分布していますが、最近では環境の変化や人為的要因により、その数が減少しているのが懸念されています。

分布と生態

ガガブタは浅い水域を好み、すっきりと浮かぶ葉が特徴です。地下茎を長く伸ばしながら成長し、浮葉性または抽水性の特性を持ちます。また、スイレンに似た円形または卵形の葉を出す一方で、スイレンと異なる点もあります。具体的には、水底の茎から伸びる部分は葉柄ではなく、真正の茎であり、この部分から新たな芽や根が出てきます。このように、ガガブタは自己増殖できる特性を持っていて、季節が変わるとともに新たな植物体を形成します。

夏から秋にかけて、ガガブタは葉柄の基部からバナナのような形状の殖芽を生成します。これにより、無限の再生が可能になります。また、花の開花は7月から9月にかけて行われ、清楚な白い花を複数咲かせます。これらの花は、葉のすぐ下の部分から出現し、水面上で5つの花弁が特徴的な姿を見せます。花弁周囲には微細な裂け目があり、表面には毛が生えたような印象を与えます。しかし、ガガブタは自家不和合性を持っており、結実には他の個体との受粉が不可欠です。

近縁種

ガガブタにはいくつかの近縁種が存在します。「ヒメシロアサザ」（Nymphoides coreana）は、ガガブタに似てはいるものの、サイズがやや小さく、花弁には毛が見られません。また、北アメリカに多く見られる「ハナガガブタ」（Nymphoides aquatica）は、アクアリウムでも「バナナプラント」として知られています。さらに、「タイワンガガブタ」（Nymphoides hydrophylla）も台湾などで見られ、同様にバナナプラントとして利用されています。

利用と文化

ガガブタの近縁種であるタイワンガガブタの葉柄は、中華料理では水蓮菜（野蓮）として食用とされています。このように、ガガブタやその近縁種は、観賞用としてだけでなく、食材としても重要な役割を果たしています。

脚注

この情報は、角野康郎の著書「日本水草図鑑」（文一総合出版、1994年）を参考にしています。

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