ガマリエル

ガマリエル（gamlȋʾēl）は、長老ガマリエル、またはラビ・ガマリエル1世とも呼ばれる、1世紀半ばのユダヤ教の重要な人物です。彼の名前は「神の報い」という意味を持ち、サンヘドリン（古代ユダヤの最高法院）の指導者として、またタルムードによれば、その長（ナーシー）としてラバン・ガマリエルとも尊称されていました。彼は紀元63年頃に亡くなったとされています。

使徒たちを弁護

『新約聖書』の「使徒言行録」には、ガマリエルが使徒たちを弁護する場面が描かれています。使徒たちがイエスの福音を説いたことでサンヘドリンに捕らえられた際、ガマリエルは、もし彼らの活動が人間的なものであれば自然に消滅するだろうが、もし神から出たものであれば、それを妨害することは神に敵対することになるかもしれないと述べ、使徒たちを釈放するよう進言しました。この進言はサンヘドリンに受け入れられ、使徒たちは釈放されました。この出来事から、ガマリエルは公正で思慮深い人物であったことが窺えます。

パウロの師

ガマリエルは、タルソスのサウロ、後の使徒パウロの師であったとも伝えられています。パウロ自身が、ユダヤ人でありガマリエルのもとで学んだと述べています。しかし、ガマリエルのキリスト教徒に対する寛容な態度は、初期のパウロの激しい反キリスト教的な考えとは相容れない点があるため、この点については議論が分かれています。パウロが師事していたのが、同名の別人である可能性も指摘されています。

キリスト教における聖人

ガマリエルは初期キリスト教に対し寛容な態度を示したため、キリスト教徒の中には、彼が実はキリスト教を信仰していたと考える者もいました。その結果、ガマリエル1世は古代ローマの「聖者一覧」に掲載され、キリスト教の聖人と見なされるようになりました。彼は、その知恵と公正さから、キリスト教徒からも尊敬される人物となったのです。

その他のガマリエル

ガマリエル1世の後にも、サンヘドリンの長を務めたガマリエルの名を持つラビが5人知られています。ガマリエル2世、3世、4世、5世、そして425年に没した最後のサンヘドリンの長、ガマリエル6世です。これらの人物は、いずれもユダヤ教の重要な指導者として活躍しました。

グノーシス神話におけるガマリエル

ガマリエルという名前は、決して珍しい名前ではありません。グノーシス主義の文書の一つである『エジプト人の福音書』には、ガマリエル、サブロ、ガブリエル、アブラクサスという名前の偉大なアイオーン（神の力を発現する存在）が登場します。これらの名前は、当時広く知られていた名前であったことを示唆しています。

まとめ

ガマリエル1世は、その知恵と公正さによって、ユダヤ教とキリスト教の両方から重要な人物として認識されています。彼の寛容な態度は、現代においても学ぶべき点が多いと言えるでしょう。

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