ガラスの天井

ガラスの天井とは

ガラスの天井（glass ceiling）とは、組織において、個人の能力や実績に関わらず、特定のグループ（特に女性やマイノリティ）が一定以上の職位に昇進できない状況を指す言葉です。これは、まるで透明なガラスでできた天井のように、目には見えないものの、確実に昇進を阻む障壁として存在していることを意味します。

歴史と定義

この言葉は、1978年にアメリカの企業コンサルタント、マリリン・ローデンによって初めて使われたとされています。その後、ウォールストリート・ジャーナル紙が1986年にこの問題を特集したことで、広く一般に知られるようになりました。

1991年には、アメリカで公民権法が改正された際、「ガラスの天井委員会」が設置され、女性の労働環境に関する詳細な調査が行われました。1995年に発表された最終報告書では、「ガラスの天井」は、「目に見えないが打ち破ることのできない障壁であり、資格や実績があっても女性やマイノリティをキャリアの上層部から閉め出すもの」と定義されました。この定義は、国際労働機関（ILO）にも採用され、世界各国でこの問題に対する意識が高まるきっかけとなりました。

背景にある要因

1980年代以降、アメリカでは労働人口における女性の割合が急速に増加しましたが、管理職に就く女性の割合は依然として低いままでした。例えば、アメリカの優良企業500社における役員会メンバーの女性の割合は約16％に過ぎず、CEOに至っては更に少数でした。このような状況は、社会的な不平等であるだけでなく、女性の就労機会を疎外し、結果的に経済成長を阻害する要因となるという危機感が高まりました。

ガラスの天井が存在する理由としては、昇進の手続きが不透明であること、男性幹部のインナーサークルに女性が入りにくいことなどが指摘されています。これらの要因が、昇進における偏った判断を生み出すと考えられています。

世界の状況

アメリカ

アメリカでは、東アジア系の人々が一定の職位以上に昇進できない現象が「竹の天井（bamboo ceiling）」として知られています。また、2016年のアメリカ大統領選挙でヒラリー・クリントンが敗退した際、彼女は大統領職を「最も高く、最も打ち破りがたいガラスの天井」と表現しました。

日本

日本では、企業や政府機関における同様の現象が特に顕著であり、国際的な調査では、ジェンダーギャップ指数が低い位置にあります。日本政府は、女性の就労環境改善を目標に掲げ、「男女共同参画社会基本法」を制定し、男女共同参画局を設置するなど、様々な取り組みを行ってきました。しかし、2020年の調査では、課長相当職以上の女性管理職の割合はわずか7.8％にとどまっており、目標達成には程遠い状況です。

ガラスの天井を可視化する指標

世界経済フォーラムによる「ジェンダーギャップ指数」や、イギリスのエコノミスト誌による「ガラスの天井指数」など、男女間の格差を可視化する様々な指標が存在します。これらの指標は、各国のジェンダー平等に関する取り組み状況を測る上で重要な役割を果たしています。

まとめ

ガラスの天井は、単なる人事上の問題ではなく、社会全体の不平等や経済成長の阻害要因に繋がる深刻な問題です。この問題に対処するためには、組織の意思決定プロセスの透明化、昇進における偏見の排除、女性やマイノリティが活躍できる環境の整備が不可欠です。また、社会全体でジェンダー平等に対する意識を高めることも重要な課題です。

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