ガリバー旅行記 (1939年の映画)

『ガリバー旅行記』は、1939年にアメリカで制作されたアニメーション映画です。有名なアイルランドの風刺作家、ジョナサン・スウィフトによる同名の古典小説を原作としており、特にその第一篇である「リリパット国渡航記」、すなわち主人公レミュエル・ガリバーが小人の国を訪れるエピソードが映像化されています。

この映画は、フライシャー・スタジオが手掛け、パラマウント映画が配給しました。日本においては、初めて劇場で公開された長編カラーアニメーション映画として、映画史において特筆すべき作品となっています。

フライシャー・スタジオは、1930年代半ばから長編カラーアニメーション映画の制作を構想していましたが、配給元であるパラマウント映画は当初、多額の費用がかかることや、当時の映画業界に長編アニメーションを公開した前例がほとんどなかったことから、その提案に消極的な姿勢を示し続けていました。しかし、1937年にウォルト・ディズニー・プロダクションが制作した長編カラーアニメーション『白雪姫』が全世界で空前の大ヒットを記録したことが、状況を大きく変えます。パラマウント映画は、この成功に対抗すべく、そして追随すべく、急遽フライシャー・スタジオに長編アニメの制作を指示。1939年のクリスマスシーズン公開という目標を掲げ、製作が急ピッチで進められました。

制作にあたっては、主人公である巨大なガリバーのアニメーション表現に、生身の俳優の動きを撮影した映像をトレースする「ロトスコープ」という技術が効果的に使用されました。これにより、写実的で滑らかな動きが実現されています。他にも、当時の最先端技術や工夫が凝らされた結果、映画は完成。

公開されたアメリカでは、目覚ましい興行的な成功を収めました。上映館数がわずか50館に限られていたにもかかわらず、最終的に327万ドルという多額の興行収入を記録し、商業的にも成功を納めました。また、この作品に登場するリリパット人たちは、その後制作されたフライシャー・スタジオの短編アニメーションにも登場しています。

本作の権利は、後にナショナル・テレフィルム・アソシエイツ（NTA）がフライシャー・スタジオの過去作品群と共に買い取り、さらにその後、リパブリック・ピクチャーズ（後にパラマウント映画が買収）へと移りました。しかし、著作権の保護期間に関する当時のアメリカの法律では、公開から28年以内に著作権を更新する手続きが必要でしたが、この更新が行われなかったため、本作はパブリックドメイン（公共財産）となりました。

日本でも著作権保護期間が満了し、パブリックドメインとなったことから、現在では様々なメーカーから安価なパブリックドメインDVDが発売されており、手軽に鑑賞することが可能となっています。

フライシャー・スタジオの技術力と、当時のアニメーション映画制作の情熱を示す本作は、特に日本の劇場用アニメーションの歴史において、カラー長編の先駆けとして重要な位置を占めています。

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