ガリーナ・スタロヴォイトワ

ガリーナ・ワシリエヴナ・スタロヴォイトワ（1946年 5月17日 - 1998年 11月20日）は、ソビエト連邦末期からロシア連邦にかけて活躍した政治家であり、民族問題に関する深い専門知識で知られていました。彼女の生涯は、学術的な探求から始まり、激動の政治の世界を経て、非業の死を迎えるという劇的なものでした。

学術的背景と民族問題への傾倒

チェリャビンスクに生まれた後、家族と共にレニングラード（現在のサンクトペテルブルク）へ移り住んだスタロヴォイトワは、レニングラード大学で心理学を学びました。卒業後は、工場の心理専門家として人々のカウンセリングにあたり、また建築設計事務所での勤務と並行して大学で社会心理学の講義も担当しました。1971年には社会心理学の修士号を取得しています。

その後、彼女の関心は次第にソ連が抱える複雑な民族問題へと移っていきました。1974年、ソ連科学アカデミー民族学研究所に入所し、実に17年間を民族誌学の研究に捧げました。特にカフカス地方での精力的な調査は、この分野における彼女の知見を深める上で重要な期間となりました。1980年には、その功績が認められ、民族誌学の分野で社会人類学博士候補の学位を授与されています。研究活動の傍ら、彼女は当時のペレストロイカにおける政治改革を支持し、著名な人権活動家であったアンドレイ・サハロフ博士ら、改革を志す人々との交流を深めていきました。

政治の舞台へ

1989年、ソ連の改革の一環として新設された人民代議員大会の選挙において、スタロヴォイトワはアルメニア選挙区から立候補し、当選を果たしました。これは、彼女が学術の世界から直接政治の舞台へと踏み出した重要な一歩でした。翌1990年にはロシア連邦共和国の人民代議員にも選出され、ロシア政治における影響力を高めていきます。

ボリス・エリツィンがロシア連邦共和国最高会議議長に就任すると、スタロヴォイトワはその専門性を買われ、民族問題担当の国家顧問に起用されました。さらに、エリツィンがロシア大統領に就任した後も、彼女は民族間関係担当大統領顧問として、連邦内の複雑な民族問題への対応に中心的役割を果たしました。1991年8月に発生した保守派によるクーデター未遂事件では、エリツィンを支持し、最高会議ビルに籠城するなど、民主派の側に立って行動しました。

1993年には、民主派の主要勢力である「民主ロシア」に参加し、共同議長の一人となります。しかし、同年11月には大統領顧問を解任され、政治的な立場に変化が生じます。それでも彼女は政治活動を続け、1995年12月のロシア連邦議会下院（国家会議）選挙では、政治的な拠点であるサンクトペテルブルクから立候補し、再び国政の舞台に戻りました。

非業の死

民主化と改革を強く主張し続けたスタロヴォイトワの活動は、多くの支持を集める一方で、強い反発も招きました。1998年 11月20日の深夜、サンクトペテルブルクにある自宅前で、彼女は武装した2人の襲撃者によって自動小銃と短銃で銃撃され、その場で死亡しました。52歳でした。この襲撃では、同行していた補佐官のルスラン・リンコフも重傷を負っています。

スタロヴォイトワの暗殺は、ロシア国内外に大きな衝撃を与えました。厳寒の中執り行われた葬儀には、数千人もの人々が参列し、このテロ行為に対する深い悲しみと怒りを表明しました。彼女の死は、ロシアにおける改革派政治家やジャーナリストが直面する危険性を改めて浮き彫りにする出来事となりました。彼女の勇敢な姿勢と民主化への貢献は、今なお多くの人々に記憶されています。

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