ガルアーム

オートバイ用サスペンション：ガルアームの技術解説

オートバイのリヤサスペンションには、様々な構造のスイングアームが用いられています。一般的には、車軸とスイングアームの揺動軸を一直線上に配置するシンプルな構造が主流です。しかし、エンジンの排気系レイアウトやその他の設計上の制約から、このシンプルな構造が採用できない場合があります。

このような設計上の課題に対し、本田技研工業が開発したのが「ガルアーム」です。これは、スイングアームを上方に湾曲させた独特の形状が特徴で、同社が商標登録している技術です。

カモメの翼を思わせる形状

ガルアームの形状は、滑空するカモメの翼を連想させることから名付けられました。この湾曲した形状により、排気系の取り回しを容易にすることができます。特に、マフラーをスイングアームの上を通すレイアウトを採用する場合に有効です。これにより、マフラーの設計自由度を高め、排気効率の向上や軽量化に貢献します。また、車体デザイン上のメリットも生み出します。湾曲したスイングアームは、スタイリッシュな外観に繋がることが多く、スポーティな印象を与えます。

類似技術との比較

スズキも、自社のバイク（スズキ・ガンマなど）で類似の技術を採用していますが、名称は「湾曲スイングアーム」としています。ガルアームとスズキの湾曲スイングアームは、形状が似ていますが、詳細な設計や製造プロセスには違いがある可能性があります。これらの違いは、それぞれのメーカーの設計思想や技術力に起因していると考えられます。

ガルアーム採用車種

ガルアームは、ホンダの様々なバイクモデルに採用されてきました。代表的な車種としては、以下のものが挙げられます。

NSR250R（3代目）：2ストロークレーサーレプリカとして人気を博したNSR250Rは、3代目モデルでガルアームを採用。軽量化と高い運動性能に貢献しました。
CBR250RR：250ccクラスのスポーツバイクとして高い人気を誇るCBR250RRにもガルアームが採用されています。シャープなハンドリングを実現する上で、重要な役割を果たしています。
CBR400RR（1990年モデル）：1990年モデルのCBR400RRでは、キャステック・ガルアームとして採用されました。これは、ガルアームの技術をさらに進化させたものと言えます。
CBR1000RR（2008年モデル）：スーパースポーツモデルのCBR1000RRにもガルアームが採用されています。最高出力と軽量化の両立に貢献しました。

プロアームとの関係

ガルアームとしばしば比較されるのが「プロアーム」です。プロアームは、スイングアームのピボット軸を車体後部に配置する構造で、ガルアームとは異なる設計思想に基づいています。ガルアームが排気系への配慮から生まれたのに対し、プロアームは、サスペンションのジオメトリを最適化することを目的としています。どちらの方式にも、それぞれメリット・デメリットが存在し、採用車種や設計思想によって最適な方式が選択されます。

まとめ

ガルアームは、排気系の取り回しを考慮した独特な形状を持つスイングアームです。ホンダが商標登録しており、多くの高性能バイクに採用されてきました。そのスタイリッシュなデザインと高い運動性能は、多くのライダーを魅了しています。しかし、ガルアームは全てのバイクに最適なサスペンション方式ではありません。各メーカーは、それぞれのバイクの設計思想や性能目標に基づいて、最適なサスペンションシステムを選択しています。

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