キックセラ亜門

キックセラ亜門 (Kickxellomycotina)について

キックセラ亜門は、菌界に存在する新しい分類群であり、21世紀にその存在が認められた特殊なカビや昆虫の腸内寄生菌を含んでいます。この亜門には、これまで接合菌門に分類されていたものが含まれています。具体的には、かつての接合菌門に属していたディマルガリス目とキックセラ目、さらにハルペラ目とアセラリア目の4つの目が、この亜門に再分類されました。

概要

キックセラ亜門に属する生物は、主に土壌や動物の糞に生息しています。ディマルガリス目とキックセラ目は、よく発達した菌糸体を形成し、特異な胞子を持つ胞子柄を立ち上げます。一方、ハルペラ目とアセラリア目の生物は、小型節足動物の腸内に生息し、規模が限られた菌体を形成します。これらの群体間には一部の近縁関係が認められていますが、主に分子系統解析に基づいてこの亜門にまとめられているのです。

特徴

キックセラ亜門に属する生物たちは、その性質において多様さがあり、共通の特徴を挙げることは難しいですが、すべての群に共通して見られるのは、その菌体が規則的に隔壁で分かれているという点です。これは子嚢菌や担子菌に見られる特徴とは異なり、接合菌の中ではあまり一般的ではありません。また、隔壁の中央には、プラグを含む特徴的な構造が存在します。

ディマルガリス目およびキックセラ目の生物は、規則的に隔壁を持つ菌糸を基に生育しており、通常の培地でも培養が可能です。キックセラ目の生物は腐生性であり、対してディマルガリス目のものは他のカビに寄生する寄生菌として機能します。無性繁殖は立ち上がった菌糸の枝で行われ、通常は分節胞子として形成されます。有性繁殖では、ほぼ球形の接合胞子嚢が作られ、その内部で単独の接合胞子が生成されます。

ハルペラ目およびアセラリア目の生物は、糸状菌ではなく、特定の菌体を形成します。これらは宿主の腸に固着するためのホールドファストを持ち、昆虫や多足類、甲殻類が宿主となります。栄養の取り方はまだあまり知られておらず、寄生と共生の両方の可能性が考えられています。有性繁殖はハルペラ目で観察され、菌体の接合後に接合胞子嚢が形成されます。

歴史的背景

キックセラ目やディマルガリス目は、以前はケカビ目に分類されていました。その際、細胞内の隔壁や胞子の形態が不完全菌であると見なされていましたが、接合胞子嚢の発見によって接合菌として認識されました。ハルペラ目とアセラリア目は、トリコミケス綱にまとめられたことがありましたが、長い間の研究でこの綱が多系群であることが指摘されました。

近年、出川洋介氏の発見によって、原土壌から見つかった菌がカマドウマの糞に関与していることが明らかになり、その生態についても研究が進んでいます。この新たな発見は、キックセラ亜門の理解をさらに深める可能性があります。

分類体系

キックセラ亜門は、大まかに次のような分類体系で整理されています。これには、キックセラ目、ディマルガリス目、ハルペラ目、アセラリア目が含まれていますが、現在の研究では伝統的な接合菌の分類が見直されています。分子系統解析は、これらの目が単系統ではなく、多様性を示していることを示す結果も得られています。

このように、キックセラ亜門はその構成生物の多様性と機能の複雑さにより、今後も研究が進むことが期待されています。

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