キックボクシング (日本テレビ)

日本テレビ『キックボクシング中継』：1960年代後半から1970年代前半の格闘技ブームを彩った番組

1969年1月から1971年9月まで、日本テレビ系列で放送された『キックボクシング』は、日本の格闘技中継史において重要な位置を占める番組でした。TBSの『YKKアワー キックボクシング中継』に先んじて放送を開始したこの番組は、当時まだ発展途上だったキックボクシング競技を全国に紹介する役割を果たしました。

番組開始当初は、毎週木曜日の20時というゴールデンタイムに放送され、1時間の枠が与えられていました。メイン会場は後楽園ホールでしたが、全国各地の試合会場からの生中継も積極的に行われ、視聴者により臨場感あふれる視聴体験を提供していました。

実況を担当したのは、日本テレビのアナウンサーとして活躍していた徳光和夫氏をはじめとするベテラン陣。彼らの熱のこもった実況は、視聴者の興奮をさらに高め、番組の人気向上に大きく貢献しました。

しかし、1970年秋の改編期に、番組の放送枠は大きく変更されます。放送曜日が木曜日から土曜日へと移り、放送時間も1時間から30分に短縮されました。時間帯は土曜日の18時という、家族でテレビ鑑賞しやすい時間帯に移行したものの、放送時間の縮小は番組内容にも影響を与えた可能性があります。

この放送時間変更と前後して、日本テレビではもう1つのキックボクシング中継番組『ゴールデン・キックボクシング』が日曜19時枠で開始されました。これにより、日本テレビは、週末のゴールデンタイムとプライムタイムの両方でキックボクシング中継を放送する体制を整えました。これは、当時隆盛を極めていたキックボクシング人気を反映した、同局の積極的な番組編成と言えるでしょう。

プロ野球ナイター中継が優先されるケースもあり、木曜20時枠での放送は、野球中継と放送枠を競合する形になったと考えられます。この点からも、当時の日本テレビが、視聴率獲得とスポーツ中継の両立に苦慮していたことが伺えます。

『キックボクシング』は、放送期間こそ2年9ヶ月と比較的短いものでしたが、その後の日本の格闘技中継番組の礎を築いた番組として、その歴史的意義は大きいと言えます。視聴者にとって、生中継による臨場感、実況アナウンサーの個性豊かな語り口、そして何より、発展途上のキックボクシング競技を身近に感じられた、貴重な時間だったのではないでしょうか。

番組の放送時間と曜日、そしてその変遷は、1960年代後半から1970年代前半にかけての、日本のメディア環境とスポーツ人気の変化を反映していると言えるでしょう。番組の記録映像などが残っていれば、当時の社会状況やスポーツ文化を研究する上で、貴重な資料となるはずです。

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