キツネどんのおはなし

『キツネどんのおはなし』は、英国の絵本作家ビアトリクス・ポターによって1912年に発表された作品です。広く知られる『ピーター・ラビット』シリーズを構成する一冊として位置づけられています。

物語は、周辺の動物たちから鼻つまみ者として恐れられているキツネどんを中心に展開します。彼は特定の住処を持たず、いくつかの家を転々としながら暮らしており、その度に周囲の動物たちを不安に陥れていました。キツネどんが留守にした家には、時折、アナグマのトミーが勝手に住み着くことがありました。

ある日、食べるものがなかったトミーは、子うさぎのパイを作ろうと考えます。彼は年寄りうさぎのバウンサーのもとを訪れ、バウンサーの目を盗んで、その孫にあたる7匹の子うさぎたちを連れ去ってしまいます。

帰宅して事態を知ったベンジャミン（バウンサーの息子で子うさぎたちの父親）は、トミーの足跡を頼りに後を追います。その道中でいとこのピーター・ラビットと出会い、一緒に捜索を進めることになります。動揺を隠せないベンジャミンとは対照的に、冷静なピーターの協力もあり、二人は夕方、森の奥にあるキツネどんの家にたどり着きます。

台所の窓から家の中を覗くと、食事の準備が整えられていましたが、人影はありませんでした。寝室の窓から覗き込むと、キツネどんのベッドで誰かがいびきをかいて眠っているのが見えます。月明かりが台所に差し込む中、ピーターたちはパン焼き窯の扉が窓の音に反応して動くのを見つけ、子うさぎたちが窯の中に閉じ込められていることを察します。家の窓も扉も鍵がかかっていたため、二人は土を掘って家の中に侵入することを決意します。

夜が明け、ようやく穴が深くなってきた頃、二人はキツネどんが家に戻ってくるのを見つけます。とっさに掘った穴の中に身を隠す二人。キツネどんはひどく機嫌が悪く、ましてや大嫌いなトミーの足跡を見つけると、さらに怒りを募らせます。鍵を使って家に入ったキツネどんは、自分のベッドでトミーが寝ているのを発見します。しばらく考えた末、キツネどんはトミーに仕返しをする計画を立てます。ベッドの上に水を満たしたバケツを綱で吊るし、家の外から綱を噛み切ってバケツを落下させようというのです。

キツネどんがこの計画を実行するために悪戦苦闘している間、トミーはいびきをかき続けながらも、片目を開けて様子を伺っていました。キツネどんがバケツの準備を終え、家の外に出たのを見計らい、トミーは素早く自分のガウンで身代わりを作り、毛布に包んでバケツの下に置きます。子うさぎの料理は時間がかかるため後回しにし、まずは台所でお湯を沸かし始めます。キツネどんが外から綱を噛み切ってバケツが落下しても、ベッドからは何の物音も聞こえず、トミーの声も聞こえません。これにキツネどんは、トミーが死んだと確信し、大喜びします。

得意満面になったキツネどんは、この後の予定を色々と想像しながら台所に入ります。するとそこには、何事もなかったかのようにトミーが茶を淹れている姿が。キツネどんを見るなり、トミーはその茶をキツネどんに浴びせかけます。これを機に、長年の宿敵であるキツネどんとトミーの間で激しい取っ組み合いが始まり、台所はあっという間に大混乱に陥ります。二人の憎まれ者が家を飛び出し、外で喧嘩を続けている騒ぎの最中に、ピーターとベンジャミンはパン焼き窯から7匹の子うさぎたちを無事救出します。

一方その頃、ベンジャミンの家では、バウンサーとベンジャミンの妻フロプシーが、子うさぎたちの行方を知らずに心配し、気まずい空気が流れていました。そこへ、ピーターとベンジャミンが子供たちを連れて帰ってきます。子うさぎたちは疲れていましたが、乳をもらって眠るとすぐに元気を取り戻します。皆で食事をしながら、ピーターとベンジャミンによる劇的な救出劇の話を聞きましたが、キツネどんとトミーの喧嘩が最終的にどうなったのかは、最後まで見届けた者はいませんでした。

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